風、吹けば恋
□第15話 誰にも渡したくなくて
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「え〜、では今日は新たに歌う課題曲を決めようと思います…」
お久しぶりです。
ここは県立F高校合唱部。
忘れている方も多いと思うので、改めて部員紹介します。
「え〜、めんどくさい。じゃあ幸村様のキャラソンでいーよ」
副部長のキョンちゃんこと大泉今日子。毒舌。ゲーム『戦国BUSHOW』のファン(特に真田幸村)。低音パート。
「それよりもっとスタンダードの方がいいんじゃないかなぁ」
も〜ちゃんこと森田つぐみ。低身長ぽっちゃり。でもグラマー。高音パート。
「…自分は何でもいいです」
サクラダさんこと桜田紗子。無口。BL好き。ようするに腐女子。伴奏担当。
「そりゃ私のソロが活きる楽曲がいいと思います!」
貴志さんこと貴志夕梨果。最近入部(第5話参照)。厚化粧で派手。目標はビヨンセ。全音域、ソロパート(無理矢理つくった)。
「わかりましたぁ、はい、じゃあ…」
そして、私が部長の水沢愛生。中音パート。
「……じゃあ…」
最近、すっかり惚けています。
「おい、愛生っちょ」
キョンちゃんが言った。
「あんたにヘッポコに加えてポンコツの称号も与えてやろうか」
「……え?」
キョンちゃんの毒舌さえ頭に入らない。
「…こりゃ重症だな」
「愛生ちゃん、どうしたの?何か悩み事?」
も〜ちゃんがたずねる。
悩み事というか…。
「あ〜!わかりました!」
突然、貴志さんが目を輝かせて言った。
「恋わずらいですね、水沢先輩!」
ドキリ。図星。
『あの人、お前にベタ惚れじゃん』
『笠松さんに決まってるじゃん』
高橋くんのあの発言以来、私はなんにも頭に入らないのだ。