風、吹けば恋

□第11話 あのコになりたい
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試合当日の朝。
私は自分の部屋の鏡の前で悩んでいた。

(何着よう。ジーンズ?スカート?ワンピース?)

ふと考える。
笠松先輩たちは戦うんだから、その応援にチャラチャラ着飾って行くのは場違いなのかも。

しかも、今日は勝てば、インターハイ出場大手の大一番。

やっぱり、ここはいつも通り、制服で行くことにした。

(その方が、減担ぎになりそうだし!)

制服を着て、レモンのハチミツ漬けを入れたタッパーふたつを鞄に入れて、私は試合会場に向かった。

試合会場には、すでに沢山の人が来ていた。

この会場ひとつで、男子から女子まで複数の試合が同時に行われるので、色んな制服のコたちが集まっている。

だから、いつも感じてた肩身の狭さを感じることなく、笠松先輩たちを応援できるのが嬉しい。

でも、入り口で残念な情報を耳にした。

海常女子バスケ部は負けてしまったらしい。

それを聞いてすぐ、あのショートカットの主将さんの顔が浮かんだ。
今頃、泣いてるのかな。

ヤキモチもやいたけれど、本人は好感を持てる人だったので、胸が痛んだ。

会場内に入ってすぐに、廊下の自販機前で黄瀬くん、森山さん、小堀さん、早川くん、中村くんに会った。


「愛生ちゃん!」
皆が手を降ってくれたので、
「こんにちは」
と、私はお辞儀をした。

黄瀬くんは私の姿を見ると残念そうに眉をしかめた。
「な、なに?」
「愛生ちゃん…また制服なんスか」
「え?」
「試合の時は私服で気合いれてオシャレして応援してほしいっス!」

え、えぇ〜。
気を使って制服にしたのに!

「あ、じゃあ決勝戦は私服にします…」

オシャレな私服かどうかは疑問だけど。

すると、森山さんが言った。
「お、いいね。じゃあウチのチア部のユニ来て欲しいな〜」

えっ?

「森山先輩、それグッドアイデアっス!」
「だろ?」
「考えただけで燃えてきたー!や(る)ぞー!勝つぞー!」
「落ち着け、早川」

か、勝手に盛り上がらないでー!
っていうか、それ私服じゃないし!
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