風、吹けば恋

□第7話 コトノハは夜風にのって
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眠りにつく前の30分。
私はひとつの決断に迫られている。
問題はひとつのボタンを押すか、押すまいかということ。

誤字脱字はないか、大丈夫。
内容に失礼はないか、きっと 大丈夫。
絵文字使いはウザくないか、…たぶん大丈夫。

あとは送信ボタンを押すそれだけ。なのに。

(お、押せない…)

意気地のなさが、邪魔をする。


メッセージは、

『だんだん暑くなってきましたね。体調崩さないように気をつけて、練習頑張ってくださいね』

宛先は、

『笠松幸男』

日付が変わるまでに送りたいのに、決断はいつまでもつかない。

今週は金曜日しか海常での練習がなくて、しかもその一日でさえ笠松先輩に会えなかったから、せめてメールだけでもと思って。

だけど、私と先輩、ささいなメールを送り合うほどの間柄じゃない。

送信できたなら、これでやっと二回目。

最初はあのタナボタデートの日。

私から、
『今日はありがとうございました。決勝リーグ頑張ってください』
って送った。

笠松先輩からは、
『ありがとう』
の返信。

絵文字はないし、一言だけ。
だけど嬉しくて、即、保護した。
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