風、吹けば恋
□第6話 海常サンセット
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今のところ、オレ以外知らないはず。
意外とよくしゃべるところや、あははと明るい笑い声。
おとなしそうにみえて、案外、気の強いところ。
細い手首や、小さな手。
白い肌と流れるような黒髪。
今のところ、オレ以外あの子の可愛さを知らないはず。
……だった。
「な、頼むよ、黄瀬」
「いや、無理ッス!」
練習が終わり部室で着替えていると、森山が黄瀬になにやら懇願している。
生意気な態度が多い黄瀬だが、上級生には意外と従順で頼み事はよく引き受けるのだが、この時は頑なに断っている。
一体なんだろうと耳を傾けていたら、思いがけない名前が黄瀬の口から飛び出してきた。
「だいたい森山先輩今までは、モデルの女の子紹介しろって言い続けてたのに、何でそれが愛生ちゃんになるんスか?」
はっ?
「愛生ちゃんじゃ、ちょっとタイプが違うじゃないッスか?」
愛生って…何で森山が黄瀬に水沢の紹介頼んでんだ。
「馬鹿野郎。オレにタイプなどない。オレは全ての女の子を可愛いと思っている。ただ、高嶺より野に咲く花の良さに目覚めただけさ」
な、何ぬかしてやがんだ、コイツ…!