moon shadow

□第一章
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あれは私が三歳のときだった。

――――――

キキーッッ

「お兄ちゃんッッ」

「大丈夫だ。愛美、僕につかまれっ!」


急ブレーキをかけた車は、たちまち崖から落ちた。

病院に運ばれた私は、幸い命に別状はなかったが記憶を失っていた。

私は誰なのか、ここはどこなのかすらわからない。

覚えているのは、事故直前の兄の言葉だけ…。


私は退院後『月影 愛美』という名前を持ち、施設に入れられた。


後から聞いた話、
あの日車に乗っていたのは、父母、兄そして私の四人。

父と母は即死。

兄は唯一の親戚の家に引き取られ、2人は無理だということで、私は施設に入れられたらしい。

兄は私と同様記憶を失い、妹がいたことすら忘れてしまった。

そのため混乱させてはいけないと、私と兄が会うことは決して許されなかった。






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