BOOK 1

□紅い月 9
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お茶を手に大久保さんを探すと中庭がみえる廊下で先ほどとは違い
悲しそうな目で空を見上げていた


『大久保さん?どうしてそんな 顔をしているの?』
なんとなく・・・
大切な人を思い出しているような・・・見てはいけないものを見た気がしたけど
何事もなかったかのように「大久保さんお待たせしました」と 
少し離れた所から声をかけ お茶をそっと置いた


静かに空をみながら時々激渋のお茶を口にする大久保さん


私も同じように大久保さんの近くに座り
そこから見える空を眺めていた


綺麗な空・・・
『こんな風によく香寿とも並んでみていたっけ』
ふと・・・友の事を思い出し名前を無意識に口にしてしまう
「・・・ 香寿 ・・・ どうしているかな?」



「麻里耶!」

 
急に大久保さんに呼ばれビクッとする私
「お前 今なんと申した?」大久保さんが湯飲みを置き私の肩を両手で掴み確認してくる


『えっ?』 
突然の事で自分が今何を発言したのか思い出せない


「同じ事を言わせるな」とさっきまでの大久保さんとは違い表情は真剣見をおび 
怖いとさえ感じてしまう


えーと・・・今・・・私・・・
大久保さんの悲しい表情をみてそれから空をみていた・・・
それで・・あっ 行方不明の 香寿 の事を思い出し・・・
名を口にしたんだ・・・

「あっあの〜私の友人の名前を呼んだと思います」と思い出しながら大久保さんに話した


「その友人の名はなんと申す?」大久保さんの掴む肩が痛い


「えっ?香寿 ・・・ですが・・・
その一年以上前から突然行方不明になって、私ずっと探していたんです」


私の話を肩を掴んだまま静かにききピクリとも動かない大久保さん


「大久保さん?」呼びかけても反応がない


再び呼びかける「大久保さん?」


「・・・麻里耶 すまない・・・お前の
その不明という友の話を
詳しくきかせてほしい・・・」そう言うと掴んだままの肩を離し隣に座りなおす


大久保さんがどうして話をききたいと言われるのか不思議だった
でも・・・目の前にいる大久保さんの表情は・・・みている私も・・・
なんだか・・・せつない気持ちにさせる そんな表情だった・・・


でも話すとなると・・・何処から話せばいいのか迷った
だって元居た世界・・・それはここからみたら未来
言葉を選らんで話すことが私にできるだろうか?話す事に躊躇していると 


「麻里耶お前が私を知っていた事はお前が煎れてくれた茶でわかった
小さい頭でいろいろと策をめぐっても話は進まん
今から話す事はお前が過ごした時の話。昔話だ気にせず話せばよい」


大久保さんが私の名前を呼び
いつもの上から目線ではなく優しい微笑みをみせながら話してきた


『おっ 大久保さん?・・・つまり私がこの時代の者でない事を知っていてきいているの?』


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