BOOK 2
□めぐり逢い 2
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とある日
大久保さんが表座敷でのお仕事に行った後いつものように掃除、洗濯と順次こなしていた
中庭で掃除をしていると廊下を大きな荷物を抱え歩く人の姿がみえた
荷物が多すぎて廊下に落としている事に気づいていないその人に駆け寄り
落ちている荷物を拾いつつ「落としましたよ」と声をかけた
荷物の落とし主は
「あ〜すみませんこん上にのせてもろてよかどか」と言うけど・・・
『のせるとまた落ちちゃうよ?』そう思った私は「よかったらこのまま一緒に持っていきますよ?」と再び落とし主に伝えた
「よかですか?ほいならすみませんが一緒にたもいやはんか そん先の部屋ですから」
と額に薄らと汗を流しながら笑顔で話してくれた
私も思わず微笑みかえし落とし主の言うこの先の部屋を目指した
私の思うこの先とこの時代の人のこの先って距離感が違いすぎる・・・
廊下を幾度か曲がり着いたお部屋の襖を開けて落とし主は荷物を下ろす
「荷物をもってもろて本当に助かいました」
と着物から綺麗にたたまれた手拭をだし汗を拭く落とし主
私が持つ荷物を手渡し「では」と頭を軽く下げお部屋を出ようとすると
「おや伊集院慈朗とよかもす。またお会いでくうとよかなあ」と笑顔をみせる
『この人の笑顔といい顔立ちはイケメンだぁ』と秘かに思ってしまった私
にやける顔を抑えつつ「香寿 」といいますと再びペコリと挨拶をして
中庭の掃除へと戻った