BOOK 3 (短編集)
□選択の時 大久保利通編
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選択の時
<かずSIDE>
あれから私は、まりやと留里子と三人で一晩中語り合った。
私達がいなくなってから皆が随分心配してくれたみたい。
街中を探して歩いたり、知人に電話をかけて連絡がないか聞いたり
警察に相談に行ってくれた人もいたようで。
だけど、日が経つにつれだんだんと諦めムードになり
今は表だっての捜索はしていないって・・・。
それでも留里子や綾先輩は
時間の許すかぎり探すのを止めずにいてくれて
私たちの両親とも連絡を取ってくれていたとのことだった。
「お父さん、お母さん、どうしているかな・・・」
私がいなくなって、両親はどれほど心配しているだろうか。
私は今の仕事に就くために、高校を卒業してすぐ寮生活を始めて
両親とはもう5年以上離れて暮らしていた。
夢に向かって進もうとした私を応援してくれて
何も言わずに笑顔で送りだしてくれた二人。
親孝行なんてもっと先でも間に合うって思ってた。
いつでも帰れる場所に二人が待っていると思っていた。
まさか、こんなふうに突然離れ離れになるなんて。
こんなことになって
もっと両親と一緒に暮らせばよかったと後悔した。
「ごめんなさい」
そう呟いて、そっと目を閉じる。
そして両親を思い浮かべる。
閉じた瞼の裏に浮かんだ両親の顔は
優しく微笑んでいた。