短編
□知ってますよ。知ってますか?
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僕は知っている。
ジメジメと雨が降り続ける、梅雨。
銀さんはいつもの死んだ魚のような目で空を眺めていた。
曇天がどこまでも続いている。
雨は止まる気配を感じられない。
「昼ごはん作りますね〜」
「おーう」
いつもと変わらない返事。
それでも、違和感は感じていた。
銀さんは雨の日になると、口数が減っている。
他の人には分からない変化だ。
でも、それが分かる。
僕は食事の支度をしながら、思う。
銀さんは何に囚われているのだろう?
いつも掴み所のない彼が、あれだけ嫌う雨とは一体何があったんだろう?
言いたいことはある。
けれど、口には出来ない。
銀色がそうさせてくれない。
僕らはまだ、子どもという枠から抜け出せない。
オレンジ色の頭が動いた。