短編

□知ってますよ。知ってますか?
2ページ/5ページ



僕は知っている。








ジメジメと雨が降り続ける、梅雨。
銀さんはいつもの死んだ魚のような目で空を眺めていた。

曇天がどこまでも続いている。
雨は止まる気配を感じられない。


「昼ごはん作りますね〜」

「おーう」

いつもと変わらない返事。
それでも、違和感は感じていた。

銀さんは雨の日になると、口数が減っている。
他の人には分からない変化だ。
でも、それが分かる。

僕は食事の支度をしながら、思う。
銀さんは何に囚われているのだろう?
いつも掴み所のない彼が、あれだけ嫌う雨とは一体何があったんだろう?

言いたいことはある。
けれど、口には出来ない。
銀色がそうさせてくれない。

僕らはまだ、子どもという枠から抜け出せない。




オレンジ色の頭が動いた。


次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ