夢想花 壱

□期待
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「ミオちゃ〜ん!
 それ終わったら廊下をお掃除してほしいんだけど・・・。」

「はい!廊下ですね。」



「終わったらこれ運んどいてー。」

「はい!分かりました。」
 


「この資料返しといてくれない?」

「はい。資料ですね。」



「洗濯よろしく。」

「はい。」



「代わってくれない?」

「はい・・・。」









侍女にも上下関係というものがあって
私は新米だから、下っ端だった。


だからこうやって雑用を押し付けられるのもしょうがないことなのだが、
自分の仕事ぐらい自分でやって欲しいものだ。



やらないと怒られてしまうし、嫌ですと断ることもできない。


朝は、日が昇る前に起きて、お昼もあまり取れず、そのまま夜遅くまで働きっぱなしである。


力仕事も多く、寝るころにはヘロヘロになってしまう。










そんな時にはあの人に会いたくなる。











いや、別に親しい関係などではない。


むしろ話したことなんてないし
あっちは私のことなど知りもしない。












初めてあの人を見かけたのは
いつものように雑用を押し付けられて


いろんなところを走りまわっているときだった。


そこでシンドバッド王と二人で歩いているところを見た。







みんな、王はすごくかっこよくて頼もしいと言っていたが、


私はそんな王よりも隣にいるジャーファル様から目が離せなかった。







綺麗な白い髪。緑のクーフィーヤがとてもよく似合っている。


なによりも、微笑んだ顔がすごくかっこよくて・・・。
そのあとに聞こえてきたキリッとしたテノールの声。




私の目に映ったすべてが良くて
仕事を忘れて見入っていた。


一瞬と言っていいほど短い間だったけど
その姿は今も私の脳裏に焼き付いて離れない。







あれ以来、もう一度お見かけすることはできないだろうかと忙しくてもあの人を探していた。







そして次にその姿を見た瞬間
私は確実にあの人が好きになっていた。
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