夢想花 壱

□何千年
1ページ/2ページ


三日月よりも太い月夜。




窓から差し込む月光に照らされた
苦しくゆがむ貴方の顔。






毎夜のごとくうなされている貴方の顔を見ると、胸が痛む。










希望とか夢とかそんなものなんてない私に
眩しい笑顔で、手を差し伸べてきたあの人。






その手を取って以来
彼の治める平和なシンドリアで過ごしている。






毎日が楽しくて、みんな優しくて
そんなあの人のために、みんなのために

私は私のできることを精いっぱいやってきたつもりだ。








だけど、目の前にいる貴方のためにできることなんてなかった。




何かしてあげたいけど何もできない。
もどかしさでいっぱいだ。



私が無意識に手を握っていると
貴方は目を覚ました。







「・・・・ミオか?」



貴方の目線は私ではなく空をさまよっている。





「はいミオです。・・・すごい汗ですね。少し、飲んで落ち着いてください。」




私は枕元に合ったグラスに水を注ぐ。






「また、悪い夢を見ていたのですか?」


私はグラスを手渡しながら言う。








「あぁ。少しな。」




窓の外をぼんやりと眺めるその瞳には
今は何も映っていない。






「・・・もう大丈夫ですよ。
 

 明日もお忙しいでしょうから、お休みください。」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ