夢想花 壱
□何千年
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三日月よりも太い月夜。
窓から差し込む月光に照らされた
苦しくゆがむ貴方の顔。
毎夜のごとくうなされている貴方の顔を見ると、胸が痛む。
希望とか夢とかそんなものなんてない私に
眩しい笑顔で、手を差し伸べてきたあの人。
その手を取って以来
彼の治める平和なシンドリアで過ごしている。
毎日が楽しくて、みんな優しくて
そんなあの人のために、みんなのために
私は私のできることを精いっぱいやってきたつもりだ。
だけど、目の前にいる貴方のためにできることなんてなかった。
何かしてあげたいけど何もできない。
もどかしさでいっぱいだ。
私が無意識に手を握っていると
貴方は目を覚ました。
「・・・・ミオか?」
貴方の目線は私ではなく空をさまよっている。
「はいミオです。・・・すごい汗ですね。少し、飲んで落ち着いてください。」
私は枕元に合ったグラスに水を注ぐ。
「また、悪い夢を見ていたのですか?」
私はグラスを手渡しながら言う。
「あぁ。少しな。」
窓の外をぼんやりと眺めるその瞳には
今は何も映っていない。
「・・・もう大丈夫ですよ。
明日もお忙しいでしょうから、お休みください。」