短編
□十五夜ですね
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「雷蔵?」
「三郎。どうしたの?皆の所に行かなくていいの?」
今日は十五夜。先ほどまで五年生全員で月見をしていた。程よくお酒が回ってきたので酔い覚ましに涼んでいると三郎がやってきた。
「雷蔵をほおっておいて酒が飲めるかっての。」
「ふふっ心配性だねお前は。ほらご覧三郎、綺麗な月だね。」
「ああ。だが、忍びは月は好かないものだ。」
「うん。」
こんなに綺麗なのにね。月を見つめながらそう言った僕の手を三郎はぎゅっと握った。
「美しすぎるから嫌ったのではないだろうか。」
「え?」
「闇を駆ける忍びは決して綺麗とは言いがたい。しかし、闇夜をどこまでも照らす月はとても美しい。忍びとは正反対のものだ。」
「だから、忍びは月が出ている時は忍び難いなどといって月を避けるのではないか?」
月から目を離し僕を見つめるその顔になぜか心が軽くなるのを感じた。
「・・・じゃあ、今晩は忍べないから思いっきり騒いじゃおうか?」
「・・いいなそれ。」
三郎は目を細めニッと笑った。
君は僕のお月様
(心を照らしてくれる道しるべだよ)