妄想つづり帳
□とある盗賊について
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そろそろ暑くなってきた、梅雨真っ最中。
いつものごとく太陽の光はほとんど雲に遮られていて、今にも雨が降り出しそうな嫌な天気だった。時折吹く風もじめじめしていて、俺にとってはただの鬱陶しいものに成り果てていた。
草原に寝転がり、空を見上げる形で休んでいた俺は、ふと、思い出したように起き上がった。
「ヤな風だな・・・」
そう呟いた瞬間、鼻先に何かが落ちてきた。
冷たい水―――雨だ。
俺ははじかれたように立ち上がり、そのまま走り出す。
あいつの、家に向かって。