俺と私の小さな初恋
□一目惚れしたんだ
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新学期が始まってから一ヶ月…何も変わりない日々。けど、俺にとっては今日、この日は一生忘れることのない日になるなんて思いもしなかった。
「ほら、席につけー、今日はこのクラスに転校生が来ることになった」
朝のホームルーム開始のチャイムがなり、クラスメイトが続々と教室に戻ってきた。少ししてから担任が居室に入った。
担任の言葉にクラスではちらほらと内緒話が聞こえる。女の子かな、男の子かなとか誰も知らないようだ。
ガラガラと入ってきた瞬間、クラスが静まり返った。俺は一人興味なさ気に外を見てたがさすがに気になって前を見た。
「関西からきました。比奈岸雅言います。よろしゅう」
一目で分かるくらい背が高く、スタイルも良くて艶のある黒く長い髪。ほんの少ししかしゃべっていないのにどこか心地良い声と関東ではあまり聞きなれない関西での方言。
「背たっか…」
「肌白い〜」
「元カレとかいたのかな?」
周りの声なんて聞こえなかった。
彼女から目が離せなくなった。
「えー、席は幸村の隣だな。幸村」
「え、あ、はい!」
話なんて聞いてなかったから突然名前を呼ばれて反射的に返事をしてしまった。
「今返事をした奴の隣の空いてる席で頼む。幸村、比奈岸はまだ教科書が届いてなくてな。明日には届くと思うから今日一日はお前が見せてやってくれ」
「……え」
「幸村君の隣とか羨ましい…!」
「しかも前の席!柳君でしょ!?」
「いいなぁ〜、変わりたい〜」
席替えのたびに聞くようなセリフも今の俺には何も聞こえなかった。
気づけば机にカバンを置いて椅子に座った彼女と目が合った。
「よろしゅう」
「…よ、よろしく」
自分でも、自分を知っている知人からすればウソだと思うぐらい俺は生まれて初めて…
人生で初めて俺は彼女に…
一目惚れしたんだ