黒子のバスケ*恋に落ちる夢

□E
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あたしは日々放心状態で
学校も行かずに3週間がたった。
こうしていてもあたしの事を
気にかける家族はいない。


両親は離婚して母親は若い恋人が
出来ればいなくなり
別れては戻ってきた。


だからいつもそばにいて
強い絆で結ばれ愛し合ってる
二人が昔から羨ましかった。
赤司さんになりたかった。
いや、もしかしたら
あたしは大輝と赤司さんの子供に
なりたかったのかもしれない。




なんて……………んなワケあるかっ





大輝からの連絡もない。
あるワケないけど
何度もケータイを見てしまう。
着信も履歴もない。
もーどうでもいいと
自分に言い聞かせる。
その繰り返し。
繰り返し繰り返し。バカだな。





街に出る。
家にいると余計なコトばかり
頭をめぐってどうしようもなくなる。
今思えば大輝のナンパも
そんな感じだったのかななんて
ぼんやり考える。




「どーしたんスか?
穂乃莉ちゃん。久しぶりっスね」



「うえ、涼太」



「なにそのいやそーな顔。
しかも呼び捨てって!?
まあ、いいっスけど!」



大きい手があたしの髪を
グシャグシャにする。



なんでかな?
大輝にされると心臓がドキドキするのに
黄瀬さんにされても何も感じない。



「穂乃莉ちゃん
メシ食ってんの?」



「うん…」



「何かあったんスか?大丈夫?」



「うん…」



「ほら。遠慮なくどーぞ」



黄瀬さんが両手を広げた。



「バカ、いらない。
そんなコトされたら
黄瀬さんのファンに殺されちゃう」



「アホ。涼太でいいし。
こゆ時は甘えればいいんスよ。
どこの誰だと思ってんスか。
穂乃莉ちゃんの
オムツ替えたのは」



「げ、やめて。オムツネタ。
そゆのないから。でもありがと。
でもホント大丈夫」



「穂乃莉ちゃん
気ィ使わせてる?
悪りぃっスね。んなら
これでガマンして」



黄瀬さんが背中を向けた。
黄瀬さんの背中にオデコをつけると
あたたかい体温が伝わってきて
涙が溢れだす。


「うっ…ひっく……あぁぁあっっ」


あたしはバカみたく泣いた。
大輝も赤司さんも
みんな一緒に流れちゃえばいいのに。

通りを歩く人がきっと
ジロジロと見てるんだろうけど
黄瀬さんは黙って立っていてくれた。





「なにやってんだよ」


顔をあげなくてもわかる。
恋してやまないあの人の声。


なんでこんなとこに…。



「大輝……」


「青峰っち」


「行くぞ」

大輝が強くあたしをひっぱった。



「ちょ、待つッス」




大輝の肩を黄瀬さんがつかむから
大輝はイライラした表情で
黄瀬さんをにらみつけた。

あたしは二人の間に入り
大輝を守るように立った。



「や、やめて。黄瀬さん。
あたし大丈夫だから」



「……穂乃莉ちゃん」




大輝が赤司さんの指先ひとつで
堕ちるように、
あたしも大輝の言葉ひとつで
言うなりになってしまう。




「行くぞ。穂乃莉」



「…うん」





◇◇



大輝の部屋に入るとあたしは
大輝に向かって言った。






「大輝のコト本気じゃなかった。
ずっとタイクツシノギだよ。
赤司さんから略奪なんて
おもしろそうだし。
小学生からずっと本気になんて
あるワケないから
だからあたしのコト
気にしなくていいよ」




あたしは早口でまくしたてた。
大輝からの『別れよう』も
『ごめん』も聞きたくなかったから。





「ふーん。手に入れてどーよ。
もういらなくなった?」



「だから…本気じゃないし
遊びだし…」




「んなのどっちでもかまわねぇ。
んで?穂乃莉は
オレをいるの?いらねーの?」



「だ…い…」



「なぁ………どっちよ?」        



「あたし…赤司さんが戻ってきたから…
だからあたし……大輝とは…」



「赤司は関係ねぇ。
穂乃莉、お前はどうしたい?」




「いらなっ…ぅっ…ぐすっ…」




「ちっと時間かかっちまったけど
赤司とはキッチリしてきた。
穂乃莉……
こんなフラフラなオレじゃ
もういらねぇか?」



「いらない…っ…
だ、大輝…なん……かっ…」




あたしは大輝に抱きついて
胸に顔をうずめた。
大輝のにおいがする。



「もう泣くなよ…穂乃莉。
いらねーなら
欲しいと思わせりゃいいし
本気じゃねーなら
本気にさせりゃいいだけの
コトだしな」



お前のたったひとつの
願いを叶える為…………







『ずっと死ぬまで一緒にいよう』






END

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