DAYS*愛さずにはいられない!

□恋シテル
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校舎を見上げれば
あいつはいつも窓際にいる
本でも読んでいるのか
勉強をしてるのか
授業以外に勉強?
人間として普通にありえんが
あいつなら不思議じゃない
なんと言ってもクラス一の
いや、学年一の真面目女だ

(気付け気付け、俺を見ろ)

はやる気持ちは押さえられず
水樹は仁王立ちで校舎にいる奈々に向かって高く指を指した

「てめぇ!水樹〜、真面目にやれ!」

灰原達の声が容赦なく飛んでくる

チッ、あいつらわかっとらんな
何年も一緒にいて俺の何を見てやがる
あいつがチラッとでも俺を見る為に
真面目すぎるぐらい真面目に
指差しに取り組んでるこの俺を!

水樹は舌打ちしてボールを蹴り返し
チラリと校舎へ顔を向けた
奈々が口元に手をやりくすくすと
笑っている顔を見れば
胸の奥がむずむずとして
自分の口元も緩み、
なかばスキップのようなステップで
練習に戻っていった

(よーし、練習終わったらもっと近くで見る事にしよう)

◇◆◇

グランドを走り回るのと同じ勢いで
乱暴に図書室に入れば
奈々は少し驚いたように振り返り
水樹に声をかけた

「水樹・・くん?部活お疲れ様です」

先程まで緩んでた口元を引き締め
水樹は真顔で「おう」と答えた

数十分沈黙が続き
ただ戸口に怖い顔をして無言で
突っ立ってガン見している水樹を
どうしたものなのかわからず
奈々はおそるおそる声をかけた

「もう時間だから鍵閉めますよ?
水樹くん何か借りるなら
探すの手伝いますけど」

「そうか、悪いな」

水樹は奈々の手をとると
本棚の奥へひっぱって行き
そこで後頭部を押さえ腰を引き寄せ
抱きしめて首筋に顔を埋めれば
息を思いっきり吸ってみた

(柔らかい、ふにゃふにゃだ
甘い匂い、なに食うとこうなる?
これが同じ人間か?)

「や・・み、水樹くんっ」

胸元を押し返してもびくともしない
水樹の力と汗の匂いに奈々は
力が入らず小さく震え出した

(怖いって言うな、怖いって言うな)

水樹の指があごにふれ
上を向かせると
親指がそっと奈々の唇をなぞる
そしてスローモーションのように
唇が重なる
ゆっくりゆっくり水樹の舌が
波のように深く浅く滑り込み
奈々の唇をふさいだ

甘いキスの後、水樹は唐突に
「俺はサッカーが何より好きだ」
と言った
余韻に浸っていた奈々は
水樹の言葉を理解できず
「ふぇ?」と情けない声をあげた

「まあ、そうゆう事だ」
「えっと、あの・・これって
あたしの事・・・好きって事ですか?」

ずれた眼鏡を直しながら
慌てる可愛い仕草に
水樹は耳を赤くして
口をへの字に曲げ
無言で頭をごりごりと掻き出した

さっきグランドから見上げた時と
同じように口元に手をやり
頬を紅色に染めながら笑う奈々を見ると
水樹の鼓動は更にドクンドクンと
跳ねあがった

「名前・・・」
「え」
「水樹くんに呼ばれてみたいです」
「いや、その」
「水樹くんは恥ずかしがり屋さんですか?」

そう言うと奈々は優しく水樹を
抱きしめ胸に顔を埋めて
「だんだん慣れてくださいね」
と小声で囁くように呟いた

(名前で呼ぶ?それは無理だろう)

それでも自分の腕の中にいる
この小さくて
柔らかくて花のような
甘い匂いのする可愛い生き物が
願う事ならなんだって叶えたい
そんな気分だった

水樹は意を決して奈々の肩を掴み
こちらに向かせ距離を縮め
口を開いた

「なあ、その・・おまえ、名前なんだっけ」
言った瞬間
「さ、さ、3年間同じクラスなのに
このアホ水樹!!!」
火花散るようなアッパーをくらい俺は地面に沈んだ

-END-

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