進撃の巨人*甘く溶ける夢

□シュガーマーカー
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「チッ、ガキどもだ」



そう言ってリヴァイ兵長は
ニガムシを噛みつぶしたような
顔をしてあたしと距離をとった。



な、なによ。 誰かが来るといつも
あたしの存在を隠すようにする。
いいじゃない。
一緒なとこ見られても。
なに?恥ずかしいの?あたしの存在。
セックスはするクセに
外には存在を隠そうとするとか
なんで?
イラッとする。問い詰めたい。
なのに言葉にできない。


だって……………


怖い。





「ふー、行っちまったな」


「あ、あたしっ。リヴァイ兵長!
あたし手ぇつなぎたいです」



「なっ、どうしたっ」



「ダメですか?ダメなんですか?」



「ダメっつーワケじゃねぇが…」



キョロキョロと辺りを伺う。
その行為が更にイラつき
あたしのガマンは簡単に
限界突破した。



「いいです、わかりました!
手なんてもう
どーでもよくなりました!」



「ハァ?なんだよ?ユキ。
なに急にフキゲンになってんだよ」



「…っ」



リヴァイ兵長は
あたしが振り上げた手を
あっさりとつかんで真顔でにらんだ。



「男に手ぇ上げんじゃねぇよ。
俺が黙っててめぇに
殴られると思ってんの」



「…思ってませんよ!」



「なんだってんだ、
イキナリキレやがって。
アレか、生理か」



「サイッテーだ」


ダメだ。話も通じない。
なんだ?生理とか。
女なめんのもタイガイにしろ。
好きな人といるのに
一緒にいてもミジメになるばっか。

なのに文句を言うコトも
できないくらい
怖くてしかたないなんて。




「おい、待て」


「痛い、離してくださいっ」


「ユキ、帰るなら送る」


「いりませんよ!」



「チッ、スネんじゃねぇよ。
面倒くせーな」



仮にも恋人でしょ。
なにその得たいの知れない
汚ないモノでも見るような顔。

もうやだ。やだすぎる。
死ねばいいのに。



「……っ…う」



「な、ユキっ
…泣いてんのか」



「ひっ…く……っ…」




近づいて顔を覗きこもうもする
リヴァイ兵長にカイシンの一撃並の
頭突きをしてあたしは走り出した。



「っ〜〜〜!!っざけやがって!
おい!このクソアマ!
戻って来やがれ!」



普段大声をあげないリヴァイ兵長の
その声に振り向かなくてもわかる。

どす黒いオーラが噴出して
そのオーラはきっと悪魔の手のように
あたしを捕まえようと
伸びてるに違いない!


あたしは死ぬ気で走り近くの
公園の土管に逃げ込んだ。



(怖い怖い怖い怖い怖い…っ)


◇◇


「いい度胸じゃねぇか」



「Σ!!」



「ったく。てめぇはなんだっつーの」



「は、入ってこないでっ」



「頭突きの次はこの俺に命令か。
ズイブンと偉くなったモンだな」



あたしはリヴァイ兵長に
オシリを向けて土管から
這い出そうとしたけど
ズボンのベルトあたりを捕まれた。



「逃げるこたぁねぇだろ、
なぁ?ユキ。


…………しかし、いい眺めだな」




ヨツンバイのまま
そろそろと振り返ると
リヴァイ兵長は目だけが
コウコウと光り
笑ったのか何なのか
口の端だけを少しだけあげた。




「やっ、やめて!離してっ!
殺さないでっ!!」


「暴れんな。落ちつけ、バカ女。
てめぇは俺をどんな目で見てんだ」



ベルトを握る力が少しゆるむと
同時にリヴァイ兵長のため息が
聞こえた。



「ハァー、ユキ………。
何かあんだろ?
怖くしねぇから言ってみろ」


「本当ですか?」



「本当だ。信じろ」



「本当に本当に本当?」



「ああ、本当に本当に本当だ」



「ほん…「てめぇは殺されてーのか?
それともバカか?しつけー。
このカスがっ。削ぐそ、コラ」



「ほほほほ、ほら。う、うそつき。
おおお、怒ったじゃないですか」



「あー、ゴホッ。んんっ!
………怒ってねぇから早く言え?」



「な、何ですか?
そのひきつった半笑い。
完全犯罪計画中ですか?気味悪い。
怖すぎる。
薄暗くたって分かるんですよっ」



「怖い怖いってうるっせーから
怖くねぇように
笑ってやってんじゃねぇか!
調子にのるのもタイガイにしとけよ、
ユキ!」



「わかりました!わかりました!
でも逆に今モノスッゴく
怖いです!!」



「クソッ…。号泣すんなっ」



リヴァイ兵長がありったけの力で
ベルトをひっぱるから
あたしはシリモチをつき
引きずられた。



「ちょ、やっ。痛い、待って。」



そしてリヴァイ兵長の胸に
おさまった。



「言えって」



「あたしと……
いるところ見られたら
恥ずかしいですか。
いつも誰か来ると離れて…………。
あたしみたいのが恋人じゃ
恥ずかしくてカッコ悪いですか…」



「なんだって」



「あた…しが…ぐすっ…
ブス…うっく…だからですか」



「ちょ、待て待て。勘違いすんな。
俺が、この俺が女と
チャラチャラ歩いてんのなんて、
みっともねーだろ。それだけだ。


それに、ほら、お前はアレだ……
その…あ……なんつーか、アレだよ!
なぁ?わかんだろ?アレ」



「えっと……さっぱり」




「かっ、顔。
今、顔上げんじゃねぇよっ」



「いっ!痛いっ」



リヴァイ兵長は
あたしの頭を押さえつけ
自分の胸にあたしの頭を抱えこんだ。



「ユキ……お前は
………綺麗だ…」




顔上げてリヴァイ兵長を見たい。
そしてもう一度今の言葉が
間違いじゃないか聞きたい。


なのにリヴァイ兵長はモノスゴイ力で
あたしの頭を押さえつけてる。



ちょ、痛い。痛すぎる。
頭蓋骨が粉砕する!


だけど……………


今ならそれも悪くない。
頭カチ割れても
脳ミソ噴き出そうとも
それでもいいやって思える。



だってね、あたしの頬に耳に
リヴァイ兵長の心臓が
スゴい音をたてて
あり得ないくらい大きく跳ねて
ぶつかってくるんだもの。





END 

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