放浪少女
□01.東京!?
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゚
「岩ちゃーん、そんなにイライラしてどーしたの?」
「及川がウザいんじゃねーの?」
「いつもだろ」
「それもそうだな」
「ちょ、二人ともヒドイ!!…あ、もしかして歩?」
「嗚呼、彼奴また…」
青葉城西男子バレーボール部部室。
副将である岩泉一はあらかさまにイライラしていた。
原因は妹である岩泉歩だった。
放課後、と言っても今から10分程前に先生から告げられた「岩泉がまた何処かへ行った」という言葉。
“また”というのは何回もある。日常茶飯事ということで…。
「今度は何処に行っちゃったんだろうねーw」
「笑い事じゃねぇよ!昨日の夜帰ってきたばかりなんだぞ?!」
「そういえば、一週間くらい居なかったな。何処に行ってたんだ?」
そう。歩は八日前、『学校に行く』と言い残し姿を消していた。
そして帰ってきたのが昨日。一週間も家を空けて行っていた場所は―――
「東京だってサ☆」
「「Σ東京!!!?」」
部室いっぱいに広がった二人の声。
部屋の外まで聞こえたんじゃないか?、と思うくらいのそれは窓を少し振動させた。
そして前回は東京。
歩の放浪癖は今に始まったことじゃない。
たから兄である一以外は“そのうち帰ってくるだろう”と考え、そこまで心配をしない。
学校の方も“またいなくなったの?w”と慣れた感じで対応している。
つまり、学校公認の放浪者なのだ。
「ホントすごいよねーw」
「すごい通り越して何も言えねぇよ…」
(次は何処なんだ…ッ!)
(なぁ、岩泉ってシスコn…)
(ドスッ)
(痛い!!俺何も言ってない!!)