暗殺一家長男の苦悩

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早朝の出来事でこねこを朝御飯に連れて行かなかったために、母さんがひどく心配していた。
オレも、いつも隣にいたこねこがいなくて寂しいと感じた。
こねこと一緒じゃないなんてありえない。
今日のデザートにプリンがあったからそれを持って朝の件を謝りに行こうと思う。

コンコン

「…こねこ、入るよ」

ドアを閉めてベッドを見れば、こんもりと布団が膨らんでいた。
テーブルにプリンを置いてこねこに近づく。

泣いてるかな、オレのこと嫌がるかな、とらしくない考えを巡らしながら布団を捲った。

「…!!」

そこにこねこの姿はなかった。

ぬくもりを残した布団とシーツがあり、枕にはこねこが溢した涙がたくさん染みになっていた。

……オレが出て行けなんて言ったから。

こねこを捜そう…まだ近くにいるかもしれない。
もしもまだ泣いていたならオレが慰めなきゃ。

「…!」

窓が開いてる。

まさか…ここから飛び降りたの…?

急いで窓を開け下を見た。

「…っ…いない」

ホッとしながら窓を閉めようと手を掛けた時、壁に何かが突き刺さっていたことに気が付いた。

手に取って見るとイルミは驚愕した。

それがこねこの今いる場所を示すものだと知り、イルミは怒りを抑えられずにはいられなかった。

「…ッ…殺してやる…」

それはどこか見覚えのあるトランプだった。




――――――――――――
――――――――




「やあ◆」

窓を開けると中に少女がいた。
一瞬部屋を間違えたかと思ったけどやっぱりここはボクの友人宅だと確信し、とりあえず声を掛けた。

「キミは誰だい?◆」

『ふ、ええ…』

「侵入者のボクがするには可笑しな質問だけど、なにも泣くことないじゃないか…◇」

『ぐすっ…ひっく…』

「困ったなァ◆」

その派手な格好をした奇術師は少女の目の前に立つと得意のマジックを披露した。

次第に少女は奇術師のトランプショーに目をキラキラとさせ泣き止んだ。

『…わあ、すごい…!』
「ところでキミはここの家の人?◇」
『っ…』

少女は思い出したように再び目をうるうるとさせた。

『イルミさんに出てけって言われちゃったから…』
「……イルミ?」
『はい、いいお嫁さんになりたかったです…』
「……お嫁さん?」
『(こくん)』
「……へぇ…◆」

男は妖しげな笑みを浮かべ、ペロリと舌舐めずりをするとこう言った。

「ボクの名前はヒソカ◆」
『ヒソカ、さん?』
「そ。キミの名前は?」
『こねこです…』
「じゃあこねこ、此処にいても退屈だろ?ボクと一緒に遊びに行こうよ◆」

あのイルミがこんなに華奢でロリータな少女を選ぶとは…ボクも大概だがイルミも相当だな。

『でもっ』
「イルミに捨てられたんだろう?」
『!』
「家族以外は道具だと思ってる節があるからねえ…◆」

しかも、お嫁さんだなんて。
独占欲が強いイルミの事だ、きっとこのコのことになれば取り乱すだろう。

クックック…凄いレア物を当てちゃった。

『(ムッ)』
「おや…?」
『ピエロさん、怒りますよ…!』
「ヒソカなんだけど◆」

突然、この少女から膨大な念のオーラを感じた。

「!!…キミ、」
『イルミさんは私とそんな風に接してませんよ!』
「クックックック…(念が使えるのか)」
『訂正してください!』
「分かった、訂正するよ…その代わりボクと一緒に来てくれる?◇」
『どこに行くんですか?』
「ヒ・ミ・ツ◆」
『うわあ』

ヒソカはこねこを抱き抱えると窓から飛び降りた。

イルミには少し可哀想なことしたかな。
こねこの居場所が分かる最大ヒントをやろう。
ヒソカは壁にヒュッとトランプを差した。

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