短編

□わがままお姫様
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「ジャンっ!なんなのよコレ!私バニラが良かったの!買ってきて!」

「ちょっと、聞いてるの!?バーニーラ!」

「ジャンってば!この、馬面ぁっ!」


んだとゴラ、今なんて言ったこのガキ…聞き捨てならねぇなぁ…?




わがままお姫様




「ぬこはとっても女の子らしいね、ジャン。そう思わないかい?」
「はぁ?あいつが?マルコ、お前マジで目ん玉腐ってるぞ?」
「そりゃ、ジャンはいいよ。だってぬこの恋人な訳だし、いろいろ知ってるんだろ?…羨ましいなぁ」
「いやいやいやちょっ待てマルコ」


あんなわがまま娘が俺の恋人?
そりゃあいつの話だ、ったく…彼氏をパシリに使う時点でもうアウトだっつーの。
正直、ミカサを想ってた頃の方が絶対良かった…なんて、最近ずっと思う。
まぁぬこだって可愛い一面もあるんだが。


「ジャーン!このキャップ固くて開けられないの!」
「ああ?…(プシュッ)」
「わあ…!すごい!」
「楽勝だろ。お前握力無さすぎ」
「ちょっと失礼よ!ジャンのくせに!」
「っせぇチビ!」
「なによ馬面ぁーっ!」


前言撤回、全然可愛くねぇ。

そういや最近キスもイチャイチャも全くしてなかった。
……つーか、付き合い始めの辺りしかしてねぇんじゃねぇか?
はぁ…最初は初々しくて可愛かったのによ…。


「ぬこ、今日お前ん家行ってやる」
「なによ、急に…びっくりしたじゃない!///」


別れてやる。







――――――――――
――――――






ガチャッ


「!…あ、えと、早かったねジャンっ!///」
「ああ」
「入って!」
「……いや、ここでいい」
「え?」
「あのさ、ぬこ……」
「?」
「………やっぱ何でもねぇ」


あーやべぇこれ、中々言いづらいもんなんだな…。
好きって告白するわけでもねぇのに。


「ジャン、ジャン!コーヒーでしょ?!」
「…ああ」
「熱いからねっ…きゃあっ」ガタッ
「!!ぬこっ」


間一髪だった……このままぬこがすっ転んでたら間違いなくこいつの顔にぶちまけてただろう…ナイス、俺。


「ふわああっはっ離しなさいよ馬鹿っ」
「はぁ?!馬鹿はてめぇの方だろ!」
「し、知らない!ふんっ!」


頭にきた。


「……お前なんかより、ミカサの方が品があって素直で可愛い」


もういい。
俺は間違っちゃいない。
これで良い。


「いつまでもお前のわがままに付き合ってらんねぇ…別れよう」

「っ…ジャン…?」


元々、ぬこに惚れて告白したのは俺の方だから…お前もせいせいしてんだろ?
…これで良かったんだ。


「……っうぇえ…ジャン…っ」

「ッぬこ、泣いてんのか…?」

「ジャン、いかないで…っ」

「…はっ…この場に及んでまだわがままするのかよ?」

「!ふ、ええっ…ひっ、く…」


本当に泣いてんだな…ぬこのこんな顔見たこと無かったからなんか、可愛い…。


「ジャン…っ別れるの、やぁっ…」

「!…あ、いや…その、」


ぬこ、抱き付かれたら…ああ全く調子狂うぜ…。


「わり、さっきの話は無しだ」

「…ぇ…ほんと…?」

「ああ、何泣いてんだよバーカ」

「うぅ…ふええっ、ジャンが別れるって言うからぁっ」


ぬこを久々に抱き締めた気がした。
こんなに小さくて可愛らしい奴だったんだなって思ったら無性に愛しくなった。


「好きだ、ぬこ」

「!私も、好きぃ…っ///」


もう手放せねぇな…。


(私、素直になる…!)
(ぬこ…それで充分だ)

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