ショート(リアル)

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結局皿を出しただけで、他に手伝うこともない俺はまだ潤くんの後ろ姿を見ながら物思いに耽っていた。





翔さんはこんな潤くんをいつも見てるのかなぁ。



何かいいよなぁ。
あったかいというか、自然と笑顔になるというか。
何だかほんわかする。癒されるっていうのかな?




そんなことを考えてたら、



「できたよー」





その声に現実に引き戻されると、
潤くんは少しの達成感に笑みを浮かべた表情で、
俺の前に美味しそうな匂いが立ち込める出来上がったばかりのハンバーグの皿を置いてくれた。




「わ、美味しそうー!」



「ふふ、ありがと。さ、できたて早く食べて!」





そういってサラダやスープも用意して、
満面の笑みで向かいの椅子に座る潤くん。



そんな彼に見られながら、一口口に運ぶ。




「ん、うまい!」




「そ?よかったー」




俺がそう言ったのを合図に自分も食べはじめる潤くん。




箸をもつそのきれいで白いしなやかな手が少し赤くなってることに気づき、
俺のためにしてくれたその事に少しの優越感に浸りながらその様を見ていた。



「うん、なかなかうまくできたかも」





「うん、本当に美味しいよ!」





「よかった〜。せっかくの誕生祝いに不味いもの食べさせらんないもんね」





「潤くん作ったの不味くないでしょ」



「そんなことないよ。
はじめて作るのとかは失敗することもあるし。
ハンバーグのリクエストでよかったよ笑」



「潤くんが作ったのだったら何でも美味しいと思うけどなぁ」



「はは、何いってんの。褒めても何も出てこないよ?」





…本音なんだけどね。




たまに会話に紛れ込ませる本音を
彼は本気で受け取ってはくれないんだ。



自分のことになると本当に鈍いんだから。


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