ショート(リアル)

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「え?」



「こうやって私を祝ってくれたお礼がしたいんです。
私も潤くんの誕生日を祝いたい」




「ありがとう。でも…」




「まだその日は先約いないでしょ?
先着順にしてくださいよ」



無理を承知でお願いする。



「うーん」




そんなとき、

バイブ音が鳴り響く。



「あ、俺のかも。ちょっと出ていい?」



すっと席を立ち、赤いiphoneを手に取る潤くん。




「…はい。…うん、うん。えっ?」



モンブランをフォークでつつきながら、その声に耳をそばだてていると、


「はい、換われって」



「はい?」


潤くんが持っていたiphoneをこちらによこす。





何?と思いながら、
恐る恐る耳にあてると、


「よう、潤のハンバーグ美味しかったか?」



「何か電話しなきゃならないような気がしてさー」



何だこの人。こういうことには勘が働くのか。



「モンブランも美味しかったろ?
練習だっていって、沢山作って食べさせるから俺飽きちゃったけどな」


何だよ、のろけかよ。




ふと潤くんに視線を移すと、少し不安げにこっちを見ている。





「潤をあまり困らせんなよ。
あいつはお願いや頼み事を断れないんだから。」




今この風景を見ていたかのような言いぐさに、俺の思いも見透かされているようだ。





「潤に何か言われたかもしんないけど、
まだ予定が立たないだけだから。
俺が頼むまで何もしないでいいよ」





もう、はい、と言うしかない。





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