ペトルーシュカの微笑み
□ハンター試験6
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キルアは身を潜めていないので、むしろ追跡者を誘っているので…本当にあっけなく見つかった。
ヒソカに見つからないように私の方が身を潜めるべきかとも思ったけれど、一夜明ければきっと自分の念をちょっと掠め取られたくらいで彼が私をしつこく追いかけることなどないだろうと思えた。
そして、予定通り、私はキルアの目の前に降り立つ。
「キールア」
「うぉっ!」
キルアがおっきなネコ目を更に大きく見開いて私を見る。
「久しぶり〜」
「え、お前…じゃないな…」
一瞬ヘタクソな追跡が私かと思ったんだろうけれど、絶の態勢からキルアの目の前に降り立って、纏に戻った私は追跡者ではありえなかったし、追跡者のまるわかりな気配は未だ背後にある。
動揺しつつもそれを理解したので納得したのだろう。
「うん、違う。私暇だから、私を狙わないかなって人のところを転々としております」
お道化て言うと、キルアは少し呆れたように私を見たが、何かに思い至ったらしく、少し目を見開いた。
「転々とって…まさか…」
「うん?まだクラピカとかには会ってないよ?」
「じゃあ…尚更だろ…まさか、ヒソカ…」
「うん、ヒソカはゼビル島に上陸してからそっこー私を見つけたよ。ヒソカに探されたらひとたまりも無いね」
「大丈夫か?」
「うん、全く問題なしよ。何か軍艦島からこっち、ヒソカ優しくてさぁ…修行してくれたりとかするの」
「はぁ?!」
「ヒソカは今私のお師匠様だよ?」
「はぁ?!マジで言ってんのかよ?」
「私の成長を見つつ、仲良くする為の作戦だって言ってた」
「作戦だとしたらそれを本人にバラしていいのかよ」
「それ本人に突っ込んでやってよ」
「それは無理」
やっぱりキルアとの会話はテンポが良い。
結構気が合うみたいで、追跡者は無視したまま会話が弾んだ。
キルアはターゲットがわからないこともあり最終的に追跡者を含め、出会った奴を適当に3人狩るつもりらしい。
だから、誰かに会わないかウロウロしているみたいだった。
枝や枯葉だって落ちている森を歩くのに、足音一つ立てないキルアはすごい。
私は音を立てないように歩いたりは難しいので、限りなく絶に近い纏の状態を保っている。
隣で絶したら、キルアが不審に思うかもしれないし、念を使えない人間が気配を消すようにしている風に見えると思う。
「あ、川だ」
「今日はこの辺で落ち着くか?」
キルアはどうやら私が居るからこのまま野営しようと言ってくれているらしい。
何だかんだ言って優しいよね。
「…うんっ」
「何だよ」
つい、ニヤニヤしてしまった私に、不機嫌そうに言うキルア。
「ごめんごめん…キルア優しいなぁって思って」
「はぁ?何言ってんだよ」
「ううん、何でも無いよ〜」
ニヤニヤしてしまう私にちょっと怒りつつも色々気遣ってくれるキルア。
イルミとこういう所が似ているなぁって思う。
そんなこと言ったらキルアは嫌がりそうだけど。
「キルア〜魚……私捕って来るね」
軍艦島で釣った魚を怖がっているシーンを思い出した。
実際先日の軍艦島で同じシーンがあったか実際には目にしていないのでわからないけど、キルアの性格が原作と同じであるからにはきっと、同じように苦手なのかなと思う。
「じゃあ俺、薪集めてくるわ」
キルアの姿が森に消えるのを確認して、私は一つの実験を行うことにした。
蝗の充電(スティールオリジン)で入手したヒソカの念を、空のガラスをもう一つ具現化してその中に少し分け入れる。
私はヒソカの元を離れる時渡されたものがあった。
トランプが一枚。
それもジョーカー。
そう、ジョーカー…何かの切り札に使えってことだろう。
私はそのトランプを周で覆い、腕に血が滴る程度に浅く傷をつけた。
私の”変化させたオーラを混ぜた私の血”という物質がヒソカのオーラと交る。
私は腕にオーラを集めある程度治癒させると、瓶の中身を一口飲んだ。
制約とも呼べない程度だけれど、自分のオーラを水にしたものと、私の血を他人のオーラに混ぜて自分のものとして使用する。
魔女の秘薬(ドリンク イット ダウン)
オーラが覚えた技は繰り出すことが出来る。
変化系能力者のそれは容易い。
私は指先から粘着質なオーラを飛ばすと、魚に着け、難なく引き上げた。
数匹釣ったところでオーラが尽き、どの程度であれば使用可能か少しだけ感覚がわかった気がした。
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