ジョーカーの微笑

□4.ガマンの限界
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どうしてかわからないけど、ヒソカは私に夢中らしい。



今だって私は彼の腕の中




      ガマンの限界





ヒソカは一週間もしない内に帰って来た。



彼の試験結果を私は重々承知しているが、何も聞かないわけにもいかず、どうだったか訊ねると、憮然として失格になったと言う彼は、私を両腕で抱き締めた。



「ただいま◆」


「………おかえり」



いってらっしゃいは彼の耳に届けることが出来なかったけれど、おかえりはヒソカの耳にしっかりと届けることが出来た。



ヒソカは私のいってらっしゃいを聞いていないから、すごく驚いた表情で私を見つめる。



「……マホ…好きだ…ボクのものになって…◆」


「……誰かのものとか、怖いし重いよ…」


「……重い?」


「うん、重い」


私の台詞にヒソカは何か考え込むように視線を僅かに下方にずらし、何か思いついたように視線を私に戻したけれど、尚も何か言いよどむように薄く開いた唇が少し、揺れた。


「……ボクと付き合ってください◆」



形の良い唇からやっと発せられた音は、ヒソカに似合わない台詞ランキング上位に食い込みそうな単語で、驚くことしか出来ない。




「……は?」


「付き合おう◆」


「……え?」


「付き合うって、一般的な男女が恋人同士になる契約を交わす時に用いる単語だろう?」


「うん、その言い回しすごく嫌だけど概ねそうだろうね」



こっちの世界でもそうかは知らんかったけど、こっちの世界の住人ヒソカが言うなら確かだろう。


人間関係希薄過ぎてそういう俗っぽいことはよくわからない。


元の世界では十分俗っぽい性格だったと思うけど。



俗っぽい…っていうか、まあ普通?



「好きだよ…マホ…付き合おう◆」



「い…嫌だ…」



「ボクのこと、好きって言ったじゃないか◆」



「そんなこと言ったかもしれないけど、付き合う程じゃないんだごめん」




結構今酷い返しをした自覚はあるけれど仕方ない。


だってヒソカのくせに直球勝負しかけてくるから、直球で断ることしか出来なかったんだもん。


「現時点ではまだ…って解釈でいいのかな?それとも…何か理由があってボクと付き合うつもりは今後も無い…なんてことは無いだろうね?」


そう言ってヒソカはこちらに一歩踏み出す。



纏う雰囲気が少し変わった。



怖い。




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