白いお姫様と王子様

□第壱章
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『ハァッ…ハァッ…』



シンシンと雪の降る夜。
周りと同じ真っ白な髪を靡かせ、少女は走る。


服も髪も雪で濡れ、冷たい外気が彼女の肌に刺さる。


だが、彼女はそんなことも気にせず、必死に走り続ける。


行く先もない。

どこに向かって走ってるわけでもない。

だが、彼女は走り続けた。


何故なら、彼女は追われているから。


彼女の数百メートル後ろを、ガラの悪そうな男達が追う。


彼女は無我夢中で走った。


そのためか、前を歩いていた誰かにぶつかってしまった。


彼女はぶつかってしまった反動で、後ろに転んでしまった。



「あ?」


少女がぶつかってしまった人間は、周りの色とは違い、燃える炎のような赤い髪をしていた。


周りには、何人かの男達と、少女と同じ真っ白な髪を持つ幼い少女。



『ぁ…』



少女は言葉を失った。

自分は挟み撃ちにあってしまったのだろうか

そう思ったからだ。

彼らを映す少女の瞳は恐怖に揺れ動く。


そんな少女を見て、男達の内の一人が声をかける。



「すまんなぁ、ぶつかってもうて。
痛かったやろ?
手、貸してみぃ」



そう言って手を差し伸べるサングラスの男に、少女は戸惑った。


もしかしたらこれは作戦で、この手を掴んだら自分は捕まってしまうのではないか。

と、思ってのこと。



『ぁ…の…』



やっとの想いで絞り出した声。


だがそんな声も、後ろから追ってきた男達によってかき消された。



「おい、てめぇら!!」


『(ビクッ』


「その女、こっちに渡しな」


「あ゛?」



赤い髪の男は、不機嫌そうに少女を見た。


少女の怯えようは尋常ではなく、何かワケありだと、即座に判断した。


赤い髪の男が隣のサングラスの男を見る。


サングラスの男は頷く。


どうやら彼も理解したようだ。


少女が自分達を恐れたのは、コイツらのせいだと。



「すまんなぁ。それはできんわ」


「何だと!?」


「この子はあんたらに対して怯えとる。
怯えとる女の子を、その元凶に渡すほど俺達は薄情やない」


「くっそ、なら実力行使で───」



男はそれ以上、言えなかった。


気づけば、自分以外の仲間が地面の上に横たわっていたから。


何が起きたのか、わからないのだ。


男は、赤い髪の男を見る。
赤い髪の男は口角をゆっくりと上げ、右手に握り拳を作り、そこに赤い炎を灯す。



「ひぃっ、ぉ、俺が悪かった!!

命だけは─────」



言う途中で、男はぶっ飛んだ。


赤い髪の男が、男を殴り飛ばしたのだ。


男はそのまま気を失い、それ以上動くことはなかった。



サングラスの男は呆れた様子で男らを見た後、視線を少女へ向けた。


少女は、金髪の男に抱えられていた。



「その子の様子はどうや?十束」


「気絶してる。でも、外傷はないみたいだよ」



十束と呼ばれた男がそう言えば、サングラスの男は「そうか」と胸をなで下ろす。



「取り敢えず放っとくわけにもいかんし、何やワケありみたいやし……

取り敢えず、バーに連れて帰るか。

ええか?尊」


「…ああ」



尊と呼ばれた赤い髪の男は、呟くように返事を返した。


男達はそれを合図にするかのように、少女を連れて歩き出した。
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