シングル
□地獄絵図
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“ねーくどぅー、パフェ食べよー!”
うだるような暑さなので、みんながマネージャーさんにいろいろ依頼した、コンビニのアイス。
なんでもまーちゃんが選んだパフェは一人で食べると食べ過ぎだと怒られたらしく、ハルはカップのアイスが暑さのせいで溶けてしまい、食べ損ねたところだった。
まぁしょうがないかーと一通りへこんでたので、まーちゃんが気を使って言ってくれてたらやだな、とか思って。
「いーよ、まーちゃん食べたいでしょ?
ハルも食べたっていってあげるよ。」
そういったらぷくーとほっぺが膨らんだ、ポクポクならぬプクプク。
何かご不満っぽいです、どうにも。
「まさは、どぅーと食べたいの!!」
……というわけで、どろどろに溶けなければ食べれたアイスを食べるはずだったスプーンでまーちゃんのパフェに参戦することになった。
結構ボリュームがあって、確かに一人では多いと言えば多い気もする。
「じゃ、いただき「まった!まさから!!」
ずいっとスプーンが制れ、ちょっと溶けだしたチョコがかかっているソフトクリームの部分を嬉しそうに頬張った。
みるみる目が細くなって声になってない奇声をあげるまーちゃん。
「んーーーー!!
イエス!! これはすごいよでぃーおーどぅー!!」
足をバタバタさせて、手をぶんぶんさせて
あぁあちょっと、そんなにバタバタしたら危ないでしょ!!っていうくらい動くまーちゃん。
食べてみ!見たいな目をしてるけど、とりあえず一口目なので少し控えめに端、というか器の縁の部分にあるクリームとチョコの部分をもらった。
若干溶け始めてキラキラして見えて、確かに見た目だけでも美味しそう。
「まぁ、いただきます。」
「ど〜ぞ〜!」
パクリと口にいれると、ちょっと濃厚な甘味がぶわっと広がった。
ひんやりしたクリームが身体中に伝わっていくのがわかる気がする。
「おいしい!!」
これやばい。
まーちゃんナイスチョイス。
「えっまさも食べる!!」
「いや、あなたのでしょ。」
というわけでちょこちょこつまみ始め…る前に。
チラッとこっちを見て。
「ねーくどぅー、一個今まさに借りあるよね。」
ピタリとスプーンが止まるハル。
「えー…どこでまーちゃんそんな言葉覚えたんだよ。」
借り、とか。
しかもそういうつもりだったのか。
「いやいや、今からまさがやることをどぅーが真似するだけでいいよ。」
カチャリ、とスプーンが器に当たる音がして、満足げなまーちゃんがスプーンをハルの前に差し出した。
「ん?」
「あーん。」
ニヤニヤして、スプーンを近づけてくる。
え?
何、口開けろってこと?
やだよ。
ぷいとちょっと顔を背けた。
そしたら、少し悲しい顔をしちゃったまーちゃん。
うっ…
ハルの中で戦う、恥ずかしさとモヤモヤ。
いいだろ別にこんなことしなくたって!…というハルと。
まぁまーちゃんパフェくれたし。 こんくらいだったら……というハル。
しょうがない。
ここは天使ハルが出てきてあげよう。
「あ。」
「! エへ、はいっ」
パッと顔が輝いたかと思うと、口に入れてくれるというより突っ込んできたまーちゃん。
当然むせかえったハル。
「痛いよまーちゃん!」
「ブフォ!どぅーがあーってした! やった!」
ったく……ん?
こんくらいでそんなに喜ぶなよ。
……
…あれ? 真似っこ?
突然まーちゃんの言葉を思い出してぞわぞわっと背中をなにかが走った。
みるとさらにニヤニヤして、楽しみにしてるまーちゃん、いや、それは…
「無理!!」
「何でだよーでぃーおーどぅー! まさにあーんってしてよぉ!」
「いーやーだ!!」
しつこく何度も何度も言われたけどそれはぜっっったいイヤだ!!
大体元はといえばまーちゃんが勝手にくれたんだ!
はるがそんなことする必要はない!!
「どぅ〜どぅ〜!」
「絶対しな……あぁぁ!!
ほらまーちゃんパフェ溶けちゃうよ、てゆーか溶けちゃってるって!!」
「えっ!? あっ!!
早く食べなきゃ!!」
どうやら溶けるのはイヤらしく、バタバタとりあえずもくもくと二人で食べる。
はぁ、まぁごまかせてよかったか。
回りもまーどぅーがパフェ食べてるー!とか茶化してきたから早く食べちゃおうという気になり、みるみる減っていく。
なんだかんだ言っても一人前で、こうやってるとそんなに量は……ん?
……お?
「「ハートだぁ!!」」
チョコンと入った、なんかピンクの可愛らしいハートの…チョコ?かな?
「かわいいね。」
「ねー。 え、一個しか入ってないよどぅー。」
「そりゃ一人前だからでしょ。」
まぁ当然といえば当然だけど。
まぁこの場合は。
「まーちゃん食べなよ。」
「え〜…」
何となく渋るような、ビミョーな顔。あれ、珍しい反応。
絶対真っ先にまーが食べるとか言うと思ったのに。
「いーよ、まさ。いらない。
どぅーにあげる。」
ほい、って器ごと寄せられた。 器のしたの水滴でスーッと滑ってこっちまで来る。
なんか引っ掛かるぞ…これはなんか…
あやし…
あっ!! わかった!!
「さてはまーちゃんまたハル貸しとか言うんでしょ。
だったら要らない。」
まーちゃんに返そうとしたら、違うよ!!って急におっきな声を出された。
それこそ、楽屋のみんなが振り向くくらいの。
「な、なんだよ。」
「どぅーはまさのだからいーの。」
「……は?」
なんじゃそりゃ。
どぅー?まさの?なにそれ?
「だから、まさはどぅーがおいしいって食べてるとこ見てるだけでいいの。 まさもそれでおいしいから。」
ねっ!って自信満々な顔でそういってくれたまーちゃん。
……なんだよ、それ。
よくわかんないけど。
でも、なんか嬉しい。
「? どぅー顔赤いよ?」
「…うっさい。 暑いからでしょ。」
じゃ、もらうよってぽいっと口のなかにいれる。 予想通りのイチゴっぽい感じで、さっきまでのチョコとソフトクリームと混ざって、とにかく美味しい。
どお!?どお!?って机に前のめりになって聞いてくるまーちゃん。
おいしいよ。
でも、まーちゃんハルじゃないんだから聞いたってこの味がわかるわけないじゃん。
ハルが、こうやんなきゃ
……わかんないでしょ?
借り、返すよ。
「んーーーーー!!!!!?」
「おいしいだろ!」
二人の口を、一瞬重ねて。
甘味が、まーちゃんの方に移って。
「ぁまぁい……」
アイスも溶かすような夏のはじめの温度より
よっぽど熱くなったハル。
まぁ、いいや。
太陽みたいな笑顔を見て、溶けたアイスにちょっとだけ感謝した、ハルだった。
おまけ
「なぁ、里保」
「ん?」
たまたま二人で飲み物を買いにいって、楽屋にはいると、行く前とはすっかり様子が違っていた。
「もしさ、この状況に名前つけるなら何てつけると?」
「え〜?」
やったら嬉しそうなまーちゃん、真っ赤になってるくどぅー、悶えてるふくちゃん、はるなん、あゆみちゃん、道重さん。
……そりゃあやっぱり
「地獄絵図でしょ。」