シングル

□あまえんどぅー
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ふわりといい香りと、肩がストンと重くなる。


いくら少年とか言われてても、女の子独特の優しい香りが鼻を掠めるのと同時に状況を認識する。









くどぅーが、私の肩に頭をのせている。





早鐘のように多くなる心拍数が落ち着くまで少し待って。






なるべく平静を保ちながら、聞く。





「くどぅー、いつもの?」






「………うん。」





「いつもの」というのは…



くどぅーは突然、生意気スイッチがオフになったみたいに、甘えてくることがある。


それは別に二人きりだからとか、疲れたからとかみたいな具体的な理由があるんじゃなくて、




こんなふうに楽屋でなんとなく、しかも突然にみたいなことが多い。








で、ここからは結構いつもの光景になる。

「あーーっ!!

ずるいよあゆみー!!
でぃおーどぅーはまさの!!」

まず、まーちゃん。





次に大体、いーなーいーなーって譜久村さんが言う。






くどぅーが甘えるコレは、私にしかしない。

最初はすんごいドキドキしたし、今だってやっぱり変わらずちょっとドキドキするけど慣れるくらいになってきて、まーちゃんも譜久村さんもだんだん諦めが入ってきた。









前に理由を知りたくて聞いたら別にいいでしょ、やなの?とか言ってくるからそれ以来もう聞かないことにしてるけど。








だってコレは私だけの特権で。
私だけの幸せな訳だし。







この事を認識すると、じわりと胸のなかに明かりが灯ったみたく幸せなものが込み上げてくる。








余計なことかもしれないけど、つい口をついて言葉が出てきてしまう。







「ねぇくどぅー?」







「ん?」








……さりげなく言うけど、本音だよ。









「私にしかこういうことはしないでね。」









顔はお互いに見えない。
くどぅーがどんな顔をしてるかは、見えないのがちょっと残念で。







でも自分の顔が見られないのは、ちょっとホッとして。









…へへっ、て笑うくどぅー。









あ、顔見てやりたい。
ふとそう思ったときだった。







それは








みんなが、一瞬まーちゃんの意味不明な発言に意識がいったと、同時くらい。








私にしか、聞こえてないような小さな声で、










ポツリ、と言った。














“あゆみだからしてんだよ。”








うん。やっぱり、顔はお互い見えなくてよかった。










軽く私からもくどぅーにもたれかかって、私も甘える。









楽屋のみんなから冷やかされることも、マネージャーさんがいたとしても関係ない。









この甘えん坊は、私のものだ。








私だけの、ね!

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