シングル

□ある夕方
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「あゆみちゃん、、」




「…ふふ…はい?」



「えへ、呼んだだけ。」



ある休日の夕方、干した布団に二人で入る。




「ふふ。」
「えへへ。」




あ、服は着てるよ?
少し薄着だけど。

温かい布団に、柔らかなあゆみちゃん。

白く小さいあゆみちゃんは、小さい猫みたいだった。


軽く茶色がかかった髪に触れると、くすぐったそうにくしゃっと笑った。


あゆみちゃんと、目が合う。





「…譜久村さん、あの…「こら。」




柔らかい唇を指でおさえて、ちょっとムッとしたような表情を作ってみる。




「みずき、でしょ。」

「あ…えー…、と」




少しうつむきぎみになるあゆみちゃん。
ちょこっとだけ、耳が紅くなってる。



「みずき!…ちゃん。」

「ふふふ、はーい。」




返事をしただけなのに、手で顔を隠してあ〜とかう〜とか唸ったあと、その表情ヤバいですとかって悶えてるあゆみちゃん。




こらこら、なんか照れくさいでしょ、こっちが。

「で、どうしたの?」

「あ、………






…いやっ!なんでもないです!」



いやいや、


「なんでもなくないでしょ。」
「なんでもないんです!」
「え? もしかして…
あ〜、あゆみちゃん…。」











“エッチなことでしょ”





ぼんっ!


少し表情を変えて、声のトーンを低くしていうと、漫画みたいに真っ赤になっちゃったあゆみちゃん。


ってことは……


「図星? やだー…」
「ちちちち違いますよ!



ただ、ちょっと…」




ふぅ、と呼吸を調えぎゅーっと目をつぶって、なにかを決心したように目を開くと茶色いつぶらな瞳がゆっくりと私を見据える。



「少し…その…きキス、したいなって…。」



モゴモゴとしゃべる子猫ちゃん。

かわいい。

言ったあと照れちゃうところもそんなこと一生懸命考えてたことも全部かわいい。



「いいよ。

ほい、もうちょっとこっち来て。」



一瞬えっ?って顔をした後、もぞもぞ動いて距離を縮めるあゆみちゃん。



「い、いきますよ。」
「う、うん。」






目は閉じない。
このかわいいあゆみちゃんを、一秒一秒を目に焼き付けていく。

ゆっくり近づいてくる





そして



距離が縮まり







二人が













重なる。





「っ!」



あゆみちゃんがパッと離れたのか、みずきが思わず離れちゃったのか、お互いわからない。

自分も予想以上にこう言うことには弱いみたいです。

でも…







「なんかこういうのっていいですよね。」

「え。」

「いやっ、その……




お互い…なんかこういう小さいことって、慣れてきちゃうと消えちゃいそうじゃないですか。



だから…大切にしたいなぁーって。」




それは今、おんなじことをみずきも思ったよ。



いつのタイミングからかはわからない、でも確かに今二人の気持ちは繋がっている。





あゆみちゃんの体温と布団に残る柔らかなお日様の香り。





そっと二人のてのひらを合わせる。




「あゆみちゃん。」


「はい。」













「…ふふ。 呼んだだけ。」




なんなんですかもーって笑ってるけど、伝わったよね。




ねぇ、もう一回、




「キス、しよう。」




太陽がゆっくりと傾く夕方の、大好きの気持ち一杯のある休日のことでした。

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