咲降る日、急く
□メロディーに言葉をつけて
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フレッゼは弾き終えると、クルリと窓のほうに身体を向けた。
「どうだった?」
季朱はドキッとして、そして観念したように現れた。
「すみません…気付いていらっしゃったのですか…」
ばつが悪そうに季朱がスッと出てきた。
「もう一回聞きたい?」
フレッゼは驚いて聞き返す。
季朱はフレッゼに贈り物を渡すと、もう一度あの曲を弾いて欲しいと頼んだ。
「ええ。とても気に入って、弾いて欲しいです」
フレッゼは季朱の真っ直ぐな眼に、ちょっと照れた。
「まいったな…あれは俺が勝手に気ままに弾いていた、無名の曲なんだが…」
「っ!」
季朱は驚いた。
「っすっごくいいです!フレッゼさんは楽才がおありなんですね!」
「…まあ…昔から耳だけはよかったって言われてたな…」
フレッゼはくせっ毛の頭に手をのせて、少し笑う。
―いいのは耳だけじゃないんですけどね…。
季朱は心の中でツッコんで、そしてフレッゼの手が鍵盤に向かう。