Spirit Ball

□氷の世界
1ページ/7ページ


「失せろ」

海奈はついてくる册の方を振り向いて、一言。

「私は青瀬に用があるんだ」

海奈はそう言うと、先へ足を進めた。風美も慌てて海奈の後を追う。册の足もやはり海奈についていく。

海奈はこれ以上何も言わなかった。


曇り空になり、かなり暗くなってきた。横をふと見てみると、海が荒れていた。

風美は急に不安になる。

―これから自分はどうなるのだろう、どうして、聖水様は私をお呼びになったのか…。

風美は当たる風の冷たさを感じながら、少し角張った海奈の背中を見てみる。

しかし少し丸みを帯びた身体は、やはり女だと思う。

荒い風に黒髪を煽られて、少し歩きにくいと思うのに、海奈の足の速度は衰えなかった。

そんな海奈に、風美と册は一生懸命についていく。



―ヴーッ、ヴ―ッ。

無言の三人の間に鳴る音。海奈はその音に気付き、さっとポケットからあるものを取り出し口に当てた。

「神流崎 海奈です。如何なされましたか?」

今まで聴いた中で、最も丁寧な口調だった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ