Spirit Ball
□氷の世界
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「失せろ」
海奈はついてくる册の方を振り向いて、一言。
「私は青瀬に用があるんだ」
海奈はそう言うと、先へ足を進めた。風美も慌てて海奈の後を追う。册の足もやはり海奈についていく。
海奈はこれ以上何も言わなかった。
曇り空になり、かなり暗くなってきた。横をふと見てみると、海が荒れていた。
風美は急に不安になる。
―これから自分はどうなるのだろう、どうして、聖水様は私をお呼びになったのか…。
風美は当たる風の冷たさを感じながら、少し角張った海奈の背中を見てみる。
しかし少し丸みを帯びた身体は、やはり女だと思う。
荒い風に黒髪を煽られて、少し歩きにくいと思うのに、海奈の足の速度は衰えなかった。
そんな海奈に、風美と册は一生懸命についていく。
―ヴーッ、ヴ―ッ。
無言の三人の間に鳴る音。海奈はその音に気付き、さっとポケットからあるものを取り出し口に当てた。
「神流崎 海奈です。如何なされましたか?」
今まで聴いた中で、最も丁寧な口調だった。