咲降る日、急く
□メロディーに言葉をつけて
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それからよく季朱はフレッゼの家へ行くことが多くなった。
季朱とフレッゼは、一つ曲を作りたいねと、協力していた。
そして完成したら、皆に披露するつもりで。
―
「では、ちょっと行って参ります」
季朱はいつものように中里の家を出ようとした時。
「散歩ですか?」
主が声をかけた。
「っ!」
季朱の肩がはね上がる。
「っ…まあ…そんなところです…」
季朱は春夏秋冬の眼など見れずに、玄関のドアノブを強く握り締めた。
「では、ご一緒してもよろしいですか?」
「!」
春夏秋冬の明るい笑顔にも屈しないで、季朱は断る理由を必死で考えた。
「いえ!少し走ろうかと!私何かと運動不足で!」
季朱は一刻も早くこの状況を脱したく、ドアを開ける。
「運動不足は納得できませんが、走るくらいなら付き合いますよ」
「いえ!20キロは走ります!」
春夏秋冬はニコリ。
「ちょうどここから海まで20キロあります。海に行きませんか?」
「っ…」
季朱は観念した様子で、コクリと頷いた。