短編

□web拍手 第六回
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海南物語
〜JIN〜

2年生になり自分にも後輩ができた
まだ数週間しか経っていないが
先輩たちに頼まれ早くも1年生の面倒をみることになった


今年の1年にはちょっと面白いのがいるから退屈はしないし
何より頼られることに悪い気はしなかった


だが
俺にはもう一つ別の仕事がある
あの牧さんから直々に頼まれた仕事が…


「またか…神!頼んだぞ」


「はい、行ってきます」


牧さんのため息混じりの言葉を合図に足早に体育館を出る


そこらの小学生より単純だから大体考えてることは予想がつく


体育館から少し離れた体育倉庫
体育館の影になり2階部分は風通しも良く他の場所よりはかなり涼しい


2階へと続く階段の途中


やっぱりここにいた


大きな体を猫みたいに丸めてスヤスヤと眠っている


「雑賀さん、起きてください」


『…んっ……なんだよ…また邪魔しにきたのかぁ〜…』


開き切ってない目をこちらに向け呑気にあくびをする姿は
とてもじゃないけど牧さんと肩を並べるプレーヤーには見えない


「牧さんが呼んでます 早く戻りましょう」


『えー…暑いのヤダ〜あんなとこでバスケしたら俺死んじゃうよ〜』


この人を説得して体育館まで連れて行くのは
牧さんからボールを奪うくらい難しいんじゃないかな


でも、こっちには切り札がある


「わかりました。じゃあ牧さんの言う通り差し入れは俺たちで分けますね」


『差し入れ!?なになに?何もらったんだ?』


さっきまでぐったりしていたのは嘘だったかのように雑賀さんは俺に飛びついて来た


「アイスですよ でも雑賀さん練習来ないんですよね?なら雑賀さんの分はないですよ」


『いくいく!すぐにいかせてもらいます!!』


そう言うや否や雑賀さんは物凄いスピードで階段を駆け下り制服のシャツを脱ぎ捨てて体育館へと消えていった


よし、これで今日の仕事は片付いた

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