短編

□web拍手 第五回
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ー海南 物語ー

〜Nobunaga〜


『はぁ〜ぁ めんどくせーな…何で3年の俺がこんな雑用やらされんだよ!こういうのは2年の仕事だろ?なぁ神!』


「仕方ないじゃないですか…牧さんが雑賀さんにやらせろって言ってたんですから。文句言わずにやってください」


さり気なくファイルとペンを隣に立っていた神に渡そうとするも笑顔で突き返された


牧が用意した新1年生の名前が書かれた紙にチェックを入れるこの作業をどのくらい前から始めただろうか
体育館前にずらりと並んだ新入生の列はさっきから全く減る様子がない


このクソ面倒な作業は順番に1人ずつ名前を聞き
こうしてチェックしないと人数が多すぎて全員いるかきちんと確認できないからと
見かけによらず几帳面な牧がキャプテンの権力を存分に振りかざして今年から始めたものだ


牧は部活をサボりまくっている俺にペナルティとしてこれをやらして
さらに神を見張り役として俺の隣に立たせている


そんなに俺がちょろまかすと思ってるんだろうか…まぁ否定はしないけど…


さすがにここまでされたら大人しく真面目にやるしかない


そう思い紙に視線を戻すと1ヶ所だけ丸印がついていた


もしや…この丸印のついたのが監督がスカウトしてきた奴か!?


ー清田 信長ー


清田…信長?
信長って…いかにもゴツくて強そうな名前だなぁ
こりゃついに海南にも陵南の魚住みたいな2m級が来るんじゃねぇか!?
監督もCが欲しいとかボヤいてたしな


「はい、次の人」


「NO.1スーパールーキーの清田信長!海南を全国制覇に導く男ッス!!」


ちょうど考えていたところに目当ての奴がタイミング良くやって来た
期待を込めて勢いよく顔を上げたが視界に入るはずの2m級の巨体が見当たらない…まさか…!


恐る恐る目線を下に向けると信長というよりは秀吉っぽい体格のチビが満面の笑みを浮かべてこっちを見上げていた


う…ウソだろ?
こんなチビをわざわざスカウトしたのか?


『の…のぶなが君…君身長いくつ?』


「178ッス!!!」


これまたキラキラと眩しいくらいの笑顔で答えてくれた身長は2mとは程遠い…どころか俺よりも10cm近くちっせーし!
監督はいったいこんな小柄なひでよ…っと間違えた…信長君のどこに惚れ込んでスカウトしたのか…


まぁ後でこの俺が直々に1on1でもすればその理由がわかるだろう


「なにぼさっとしてるんですか雑賀さん?手が止まっていますよ」


『はい…ごめんなさいさっさとやります』


せっかく自分の世界に気持ちよく入りかかっていたのに隣にいた神の少しブラックな笑みに脅され俺はさっきより倍のスピードで作業に取りかかった


つづく……かな?

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