リクエスト

□悪が正義を語って成り立つ世界
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無人地区に逃げ込んだ潜在犯を取り締まるという任務。
二手に分かれての追跡中、朱は視界をよぎった黒い影を見逃さなかった。
宜野座や狡噛に連絡を入れ、朱はその影を追って走る。
狡噛がなにか言いたげだったが気にしている余裕はなかった。
見失わないように走りながら既視感を覚える。
どうしてだろう、一人で追うのもこの地区に来たのも初めてなのに…そこでハッと気づいた。


「夢と…同じ……?」


近頃見る夢。ゆきを亡くし、槙島が仇となった日から見る夢。…不思議な青年の出る夢。
そこでも朱は走っていた。走って、走って、走って……少し開けた場所に出る。
そこに青年が立っていてこちらを振り向き、言う。


(こんばんは?)
「そこまでだ!!!!」
「!?」


夢にトリップしていた朱は怒鳴り声にハッと我に帰る。
周りを黒づくめの男たちに囲まれていた。思わぬ失態に唇をかむ。
そしてドミネーターを向けようとして踏みとどまる。


「……。」
「…そうだな、向けないほうがいい。まぁ…向けても問題はないがな。」


忍び笑いが漏れる。朱は表情を動かさない。
もう二度と取り乱してたまるものか。ドミネーターを持ったままただ男たちを見る。
男の一人がそんな朱をみて、忌々しそうに舌打ちした。


「その表情…あの忌々しい小僧とそっくりだ。」
「…?」


小僧…?その表現に一瞬友人兼部下の縢を思い出すが。違うなと打ち消す。彼らが縢と会ったことはないはずだ。
なら誰だ…そう思って、出てきたのは夢の中の青年。まさかそんなわけがないと思いながらも、朱は青年が自分の悩みが夢で具現化した存在で幻だとは思えなかった。
ならこの男たちが言っているのは…?


「 devil amber!!( 琥珀色の悪魔め!!)」
「……悪魔?」
「そうさ、死に神を従えた頬笑みの悪魔!!あいつのせいで!!!」
「おい、その辺にしておけ。もう時間だ。」


その言葉を合図に一斉に銃が朱に向けられた。
古臭いリボルバー。
知識としてしか知らない形状。向けられた銃口が、真っ黒な穴が…まるで吸い込まれそうだ。
そんなことを思う。回避方法を考えても最悪のパターンしか思いつかない。
ギリッと歯を食いしばった。いやにロックを解除する音が高く響いた…その時……


「君たちは、最低限の掟も忘れたの?」
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