ネタ集

□ヒバツナ嫌われ
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ボロボロに傷ついた少女が同じように…だが、少女よりも軽めに傷ついた少年と向かい合って自分の思いを吐露する。

「俺…ヒバリさんがそんな卑怯なことする人だなんて思えません。ヒバリさんは欲しいものがあったら真正面から行くタイプです!!」

少女…綱吉が自信満々に言う。言われた少年…雲雀はそれには答えずその頬をつねる。

「ひゃ!!!?い…いひゃ、いひゃい!!いひゃいれす!!ひひゃりさん!!」
「ねぇ、それって僕のことほめてそうだけどそうでもないよね?」
「ひゃな…ちょっ…いひゃひゃひゃ!!」
「なに笑ってるのさ。」
「わりゃってましぇん!!いいひゃげんはなひてくりゃさい!!!」

綱吉が涙目になって訴えるとようやく雲雀の手から解放される。赤くなった頬をさすりながら恨めしげに雲雀を見る。

「なに、その目。元はと言えば君が失礼なこというからでしょ。」
「どこがですか!!俺は思ったことそのまま言っただけです!!」
「それが失礼だったんでしょ。」
「だから、どこがですか!!ヒバリさんは脅すなんてことする前に真正面から挑んでいくし、嫌だって言われても『じゃぁ、どうすればいいのさ』とか普通に言いそうだって思ったんですよ!!…そもそも、脅すにしても相手が聞いたのに答えない時とかうるさいから散らせたい時にしか使わないじゃないですか。ヒバリさんは相手の意志を捻じ曲げてまで自分の欲しい答えを出す人じゃありません。それに、そんな答えがすぐに崩壊してしまう意味のないものだって知っている人です。」

そういう綱吉の瞳には希望も期待もない。ただ事実を述べただけ…雲雀はその瞳に身震いするほどの歓喜を感じる。
綱吉は雲雀と関わる少ない中で雲雀恭弥という人間を理解していた。それは身に宿る能力おかげである部分もあるが、綱吉本人の性格が大きく影響しているのだろう。たとえ怖くとも嫌だと思っても綱吉は目をそらさない。相手を見据え、関わっていこうとする…だからこそ、理解していける…
雲雀はそんな綱吉の強さを感じていた。

沢田綱吉…やっぱり…

「君はおもしろいね。」
「は?」
「うん。面白いよ。…弱いのかと思ったら今みたいに普通の草食動物たちとは全然違う強さを見せる…やっぱり君はいいね。」
「は?…え、へ?」
「ねぇ?」

混乱して言葉にならない音を発するばかりの綱吉を見て雲雀は笑う。それはいつものような獲物を前にした獣の様な笑みではなく、満足そうな笑みだった。綱吉は珍しい雲雀の笑みに頬を淡く染める。

「沢田綱吉。」
「は、はい?」
「僕と一緒に逃げない?」
「はい?」

いきなりのことに呆然とする綱吉を置いて雲雀は一人、話を進める。

「本当は一人で行こうかと思っていたんだけどね。…でも、こんなとこに君を置いていってあんな馬鹿な草食動物以下の奴らに君をくれてやるのは我慢ならないから。うん、やっぱり君もつれていこう。…ねぇ、沢田綱吉。一緒に来るだろう?君を裏切った奴らなんかに君が犠牲になることは無いんだ。だって、君は君で、君の意志があって当然なんだからね。」

そう言って雲雀は綱吉に手を差し出した。綱吉は呆然とその手と雲雀の顔を交互に見る。そしてゆっくりと雲雀の語ったことの飲み込んでいく…
綱吉の瞳に決意の輝きが燻った。

「俺は…お、れは…」
「…。」
「今でもまだ、みんなが大事です。」
「……。」
「でも、それでも…俺はみんなが怖い。怖いんです。笑って俺をけなすみんなが、俺を虐げて当たり前と思うみんなが…心底怖い。大事だと思う。でも、怖い気持ちが大きすぎて俺はみんなと一緒にいようとは思えないんです……俺は臆病ですね…」

そう言い、綱吉は泣きそうな顔でふりゃりと笑った。雲雀はそんな綱吉を嗤うでも怒るでもなく、言う。

「それが君でしょ。優柔不断で臆病で、なのに頑固で…強い。それが君、沢田綱吉だろう?」
「ひ、ばりさん…」
「さぁ、それで?行くのかい?」
「ふ…い、きます…一緒に行きます。連れて行って!!」
「上等。」

やさしく笑った雲雀はボロボロで立てない綱吉を重さを感じさせない動きで抱き上げる。そして歩き出す。



…その日から並盛から二人の姿は消えた…
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