ショート(復活)

□世界が滅びるその時に
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波打つ大地。崩壊する建物。


雲雀は未だその中で建っている並中の屋上でその様をただ見ていた。

「……。」

自分以外のすべての人は死んでしまっただろうか…そう思い、無感情にただ見つめる。

突然起こった世界変動。

人類に止める術も助かる術もなかった。
人々は突然訪れた終わりにただ生き残ろうと逃げまどうだけだった。

ガチャン。

後ろで扉の開く音がした。
雲雀がゆっくりと振り返ると、そこには一人の少年の姿が…

「来たの。」
「……。」
「他の群れはどうしたのさ。」
「………。」
「置いてきたのかい?…まぁ、それが正しいかもね。こんな状況じゃ他人なんてかまっていられない。」
「……。」

少年は何も答えない。下を向いて立ちすくむだけ…

「…ねぇ、何か言ったら?」
「…。」
「黙っていても仕方ないだろう?…沢田綱吉。」

少年―綱吉は名前を呼ばれてやっと顔を上げた。
そこには雲雀と同じようになにも映さない無感情な瞳。

「…みんな、はぐれました。」
「ふぅん…じゃぁ、生きていないね。だって…」

もうここ以外無事な場所は無いもの。そう言って雲雀が嗤う。
綱吉がギュッと拳を強く握った。

「そ、ですね…」
「ワォ…あっさり認めるね。君にとってあの群れはそのくらいの価値だったのかい?」

応えのわかりきった問いを戯れに投げかける。
雲雀は今まで綱吉を見てきた。だから、彼がそんなことを思っていなかったことくらいわかっていた。それでも最期の時くらい言葉を交わしていたかったからそんなことを言った。
しかし、綱吉は…

「みんなより大事なことがあったんです。」

そう言った。
雲雀は目を見開く。まさかそんな言葉が出てくるとは思っていなかった。

「俺は…最低なやつですね。みんな、大切な友達だったのに…それでも、最期だと思ったらどうしてもやりたいことがあったんです。」



綱吉はふにゃリと泣きそうな顔で笑った。
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