その他(GHなど)
□たとえそれが勘違いだとしても
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なにもない ただの暗闇の中。
フッと意識が浮上する。
(………?)
麻衣がトランスしたわけでもナルがサイコメトリしたわけでもない、それなのに覚醒したその状況にゆっくりと首をかしげる。
とにかく、何か危険が迫っているのかもしれないと現世に意識を集中させた。
すると、そこには…
(……ナル。……………と、麻衣!!?)
まだ眠るナルの隣には麻衣が寝ていた。
この衝撃的な光景に思わず神に祈ってしまいそうになるが、ナルが寝ながらも麻衣を抱き寄せる…
その行為を目にして今度は泣きそうになった。
人と触れることを極端に嫌う自分の片割れ。
その能力ゆえに仕方ない事だけれども、将来をぼんやりと心配したあの弟が、今、彼女を自分から抱き寄せるまでになったのか…と。
そして、その隣で抱き寄せられ幸せそうに眠る麻衣を見て泣きたいような安心したようなあたたかい気持ちになる。
あの偏屈な弟がここまでこれたのは彼女のおかげなんだろう。彼女にはお礼を言っても言い足りないほどだ。
現世から意識をそらす。
これ以上みているとあとでナルに怒られそうだ。それにそろそろ眠くなってきた。
どうやら危険か何かではなく、本当にただ目が覚めただけのようだ。
意識がゆっくりと落ちて行く中で少女が苦しいと泣いていた時のことを思い出す。
少女は自分と弟が別人だと知り、自分が好きなのだと思い込んだ。しかし、現実で弟と過ごすうちに違和感を持ち始めた。
少女はいつでも夢の中で自分の気持ちがわからないと苦しんでいた。
結局少女は自分を通していつでも弟のことを見ていたのだけれど…
(でも…たとえ、勘違いだったとしても…僕は…)
叶うはずもなく、形になる前に消失した少女への淡い思いをそっと思い出す。
そして、意識は再び闇に溶けていく―――― 一言だけを響かせて
嬉しかったんだ
(君の好意がなによりも)
FIN
2012・11・21 初書き
2013・2・14 掲載