その他(GHなど)

□もしも世界が滅ぶとしたら
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「明日、世界が終るんだって。」

テレビをただ眺めていた麻衣が突然口に出したのは、そんな一言だった。


「くだらない。」

ナルはそう言ってそのまま読書に入ろうとする。
その素っ気ない返事にいつものことだと思っても、少なからずムッとし、麻衣は先ほどまで見ていた特集番組を指さして反論する。

「なんだよぉ。だって、テレビで言ってるじゃん。『マヤ文明が〜』って。」

そう言って頬を膨らます麻衣にちらりと視線を向けると、はぁ…と深くため息をついた。

「…明日滅亡するという科学的確証がどこにあるんだ。それに…麻衣。お前が言うその番組では『終末論』に根拠は無く、人間が持つ負の感情が原因でできたものだと言っているが?」
「へ!?」

慌てて麻衣がテレビを見ると…
なるほど、確かにそのようなことを説明している。テレビを根拠にしていた麻衣はそれ以上反論できず、む〜と唸ってナルを恨めしげに睨みあげた。
ナルはその視線をことごとく無視していたが…だんだんと麻衣の視線が下を向いて行くのを感じ、観念したように一つため息をつくと本をパタンと音を立てて閉じた。

「なんだ。」
「…もしもさ…もしも…明日本当に世界が滅亡するなら、ナルはどうする?」
「それに根拠は無いな。」
「だから!!も・し・もだってば!!」
「そんな夢物語に思考を使うなんて無駄。」
「………(怒)。」

麻衣は怒りにこめかみが震えるのを感じたが、大きく息を吐いて霧散させる。
そしてナルから視線を外して窓の外を見る。

「麻衣?」

そんな麻衣の様子にナルは訝しげな顔をして呼ぶ。
しかし、麻衣は窓から視線を外さず、口を開いた。

「…私はね、世界が滅亡するならしたいことがたくさんあるんだぁ…」
「…。」
「好きなものたくさん買いたいし、最近できたあのおいしいって評判のケーキ屋さんで好きなだけケーキ食べたいなぁ。」
「……お気楽だな。」

呆れたようにナルが嘆息する。麻衣はナルに向き直り、頬を膨らます。

「いいんですぅ〜。だって最後なんだもん。えっと、それからね…」
「まだあるのか…」
「ぼーさんたちとたくさん遊んで話したいし、ルエラやマーティン…まどかさんともたくさん話したい。それから……ずっと、ずっと…ナルと一緒にいたいなぁ……」
「麻衣…。」
「あはは、一日じゃやりきれないね。…欲張りだなぁ。私…」

そう言って苦笑した麻衣の頬をそっとナルが撫でる。
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