その他(GHなど)

□ひとはいさ
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「…ナル。」
「なんだ。」
「ナルは好きって言わないね。」

何の脈絡もなくそんなことを言う麻衣にナルは眉を寄せ、訝しげな顔をする。
しかし麻衣はそんなナルを見ることもなく、頬杖をついて窓の外を見るだけだった。

「…それで何か不都合でも?」
「ううん。そんなことないよ。」
「なら、なんだ。」
「う〜ん?いや、今日昼間にねぇ…友達がさぁ……言われなくなったなぁ。と思って寂しくなったんだって聞いてさ。」

麻衣がゆっくりとナルを見る。
ナルは本を置き、麻衣に顔を向けた。

「……寂しいのか?」
「…ううん。だって、ナルはそんなこと言わなくてもちゃんと伝えてくれるでしょ?」

麻衣はそう言って微笑むとナルの手をそっと包み込んだ。
ナルはなにも言い返さずに視線を一瞬下げると、麻衣の手を握りこんだ。
麻衣の笑顔が深くなる。



ひとはいさ

人はさぁ、どうだか気持ちはわかりません。
         でも貴方のことはわかります。



(触られるのが嫌いなのに、
私だけは硬直しないで触れ返してくれる。
それって何よりも確かな証でしょ?)

               Fin
           2012・11・20

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