頂き物

□君が好き
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がらりと、仮にも乙女の部屋だというのに何の遠慮もなしに開けられた窓には、いつものように学ランを身に纏った恐怖の風紀委員長ことヒバリさんがいた。
やぁ、と挨拶され、オレも笑って(引き攣っていたかもしれないが)こんにちは、と言ってそれまでやっていたゲームの電源をちゃんとセーブしてから切った。
折角ラスボスまで辿り着いたのだ、セーブする前に彼に切られてしまっては堪らない。

「ねぇ、沢田綱吉」
「はい?」

…あれ、何だか今日は機嫌良さそうだな、ヒバリさん。
やけに楽しそうな声色だ。
いつもオレを見かけるなり意地悪なこと言ってきたり髪の毛ぐしゃぐしゃしてきたりするのに、今日はそんな気配ないし。

「今日、気付いたんだ」
「…は?」

何に?
相変わらずこの人は必要最低限のことしか…というか必要なことも省いて話すから訳が分からない。
なのに、ヒバリさんはにこにこと無邪気に(なんて似合わない形容詞だろう!)オレを見て言うものだから、オレは聞くに聞けないままヒバリさんの真っ黒な瞳を見返した。

「君が群れてるの見ると苛々するし、でも咬み殺すのは胸が痛むし、何なんだってまた苛々してたけど…」

靴を脱いで上がり込んでくるヒバリさん。
あ、ちゃんと脱ぐんだ…
窓から入ってくるのにそういうとこ律儀なんだな…って、近い近い…!
ずんずんとオレの目の前まできたヒバリさんが、しゃがんでオレの目をじぃっと覗いてきた。
う、恥ずかしい…
ヒバリさんって顔は美人だからこんなに近くに顔があると何だか緊張する。
顔は熱いし、心臓はばくばく煩い。

「でも、今日気付いたんだよ」

もう一度言うと、ヒバリさんは信じられないくらい綺麗に微笑んだ。
いつもの獲物を見つけた時のような背筋が凍るようなものじゃなくて、あなた誰ですかって言いたくなる、柔らかい笑み。

「そっ、そんな顔近付けないで下さいぃ!」
「…何、僕の顔嫌いなの?」
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