ミックス(混合)
□破った約束を再び誓う
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潜伏していた己の住処を振り返る狡噛の背中を見る。
そんな綱吉に雲雀は近づく。
「どうしたの?」
「いえ……。」
小さく首を振る綱吉にふっと微笑んでその頬をなでる。
「嘘つきだね。」
「…なんでわかるんですか。」
不貞腐れたように口をとがらす綱吉に笑みを深める。
「君だから。」
「たらし…」
「ふふふ…ねぇ、言わなかったことを後悔してる?」
「…どうでしょう?…俺は彼に言うべきだったんでしょうか。彼女は狡噛慎也を諦めてはいないと。
彼女は自分の正義と、そして…彼を取り戻すためにその身を、シビュラのために利用されながらも戦い続けているのだと…それを言うべきでしたか?」
不安そうに綱吉の瞳が揺れる。
馬鹿な子だと何度も思ったことをここでも思う。
人のために君がそこまで悩む必要はないのに。
だが、それが沢田綱吉だと知っているから。
人のため、それでも自分のことのように悩むのが彼だと。
そんな彼を馬鹿だとも思うけれど…認めて、好いて、許容している。
そう思い、僕も看過されているのかなと苦笑する。
「さあね。僕も知らないよ。…でも、」
「でも?」
無垢に見つめてくる瞳。
その瞳に誘われる。
誘われるままに口づければ、綱吉は顔を真っ赤にした。
「な、な、な、な!!?」
「おいおい…人前では自重しろよ。」
「!!?な、みて…!!?」
「やだよ。僕は僕のやりたいようにやる。」
「…そうかよ。」
「…っ!!恭弥さん!!!!!!」
真っ赤になってにらむ綱吉。
ムラッとした。
涙目で上目遣いはいただけない。
獣の前でそれは食べてくださいと同意義だ。
雲雀は特に。
狡噛が雰囲気の変化が変わったのを、原因とともに理解した。
「なあ、沢田。」
「はい?」
「どこに行けばいいんだ?」
「え、ああ…ああちらに車があるので…そこに…」
「そうか。なら、俺は先に行く。雲雀、あんま長くなるなよ。」
「さあね。」
「そうかよ…」
「?え、なんですか?」
狡噛はそれには答えず、サッサと車に向かう。
首をかしげる綱吉。
その背にオオカミの手がかかる。
「恭弥さ…ん!?あ、え、な!?え、ちょ、ま…!?」
「諦めな。」
抵抗を一切封じ込め、雲雀が綱吉にかみつく。
獲物と化した綱吉に逃げる術はなかった。
車に消えた狡噛の背を見送り、雲雀は笑う。
彼は使えるね。と…
そして、目の前の極上の餌にむさぼりつく。
溺れていく中、ふと思い出した。
あの彼女と綱吉が似ていると前に彼が言って、確かにと思った。
人畜無害そうな顔をしてるのに中身は頑固で一筋縄ではいかない。
だが、それよりも自分はその隣にいた男に目がいった。
己と同じ獣のような男。
奥底に獰猛な闇を飼いならす男。
にやりと笑いそうだった。