ミックス(混合)

□破った約束を再び誓う
4ページ/5ページ



潜伏していた己の住処を振り返る狡噛の背中を見る。
そんな綱吉に雲雀は近づく。


「どうしたの?」

「いえ……。」


小さく首を振る綱吉にふっと微笑んでその頬をなでる。



「嘘つきだね。」

「…なんでわかるんですか。」



不貞腐れたように口をとがらす綱吉に笑みを深める。



「君だから。」

「たらし…」

「ふふふ…ねぇ、言わなかったことを後悔してる?」

「…どうでしょう?…俺は彼に言うべきだったんでしょうか。彼女は狡噛慎也を諦めてはいないと。
彼女は自分の正義と、そして…彼を取り戻すためにその身を、シビュラのために利用されながらも戦い続けているのだと…それを言うべきでしたか?」



不安そうに綱吉の瞳が揺れる。
馬鹿な子だと何度も思ったことをここでも思う。
人のために君がそこまで悩む必要はないのに。
だが、それが沢田綱吉だと知っているから。
人のため、それでも自分のことのように悩むのが彼だと。
そんな彼を馬鹿だとも思うけれど…認めて、好いて、許容している。
そう思い、僕も看過されているのかなと苦笑する。



「さあね。僕も知らないよ。…でも、」

「でも?」



無垢に見つめてくる瞳。
その瞳に誘われる。
誘われるままに口づければ、綱吉は顔を真っ赤にした。



「な、な、な、な!!?」

「おいおい…人前では自重しろよ。」

「!!?な、みて…!!?」

「やだよ。僕は僕のやりたいようにやる。」

「…そうかよ。」

「…っ!!恭弥さん!!!!!!」




真っ赤になってにらむ綱吉。

ムラッとした。

涙目で上目遣いはいただけない。
獣の前でそれは食べてくださいと同意義だ。
雲雀は特に。
狡噛が雰囲気の変化が変わったのを、原因とともに理解した。



「なあ、沢田。」

「はい?」

「どこに行けばいいんだ?」

「え、ああ…ああちらに車があるので…そこに…」

「そうか。なら、俺は先に行く。雲雀、あんま長くなるなよ。」

「さあね。」

「そうかよ…」

「?え、なんですか?」



狡噛はそれには答えず、サッサと車に向かう。
首をかしげる綱吉。
その背にオオカミの手がかかる。




「恭弥さ…ん!?あ、え、な!?え、ちょ、ま…!?」

「諦めな。」




抵抗を一切封じ込め、雲雀が綱吉にかみつく。
獲物と化した綱吉に逃げる術はなかった。
車に消えた狡噛の背を見送り、雲雀は笑う。
彼は使えるね。と…
そして、目の前の極上の餌にむさぼりつく。
溺れていく中、ふと思い出した。

あの彼女と綱吉が似ていると前に彼が言って、確かにと思った。

人畜無害そうな顔をしてるのに中身は頑固で一筋縄ではいかない。
だが、それよりも自分はその隣にいた男に目がいった。


己と同じ獣のような男。


奥底に獰猛な闇を飼いならす男。


にやりと笑いそうだった。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ