〜古代⇔現代〜
□そのさん。
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「貴様、随分と丸くなったようではないか。お前が他人の事を気にかけるそぶりをした事など今まで見たことがない」
ニヤニヤと嫌な笑みでからかうゾークに、バクラはチッと舌打ちをした。
「うるせーよゾーク様。テメェこそこんなトコに呑気に居候しに来てんじゃねぇよ。服を着ろ。そのアホみてぇな股間隠せ。世界征服はどうした」
「なんだバクラ、貴様も我のドラゴンが欲しいのか?」
「いらねぇよッ!!ただでさえオレの姿真似てるんだ、もしテメェを見られたら王様達に何て言われるか…」
ズキズキと痛む頭を押さえてため息をはけば、楽しそうにくつくつとゾークが肩を震わせた。
「ファラオの小僧も来たのか、そうかそうか…そのうち神官共もやってきたりしてな。後世界征服は飽きたからやらん」
「…これ以上来られても困るっつの。それからさらりと世界征服に飽きたなんて言葉使うんじゃねえ」
「飽きたもんは飽きた。またファラオの小僧に邪魔されるのも癪だしな」
「テメェ、絶対最後のが本音だろ…」
最早ため息しか出ないバクラ。呑気に辺りを伺うドラゴンとその持ち主を眺め、もう一度ため息をつくと同時にうさみみもへたんと潰れた。
「バクラー、もうアルフォンスちゃん家行くよー?」
直後、ひょっこりと了が廊下に顔を出し、妙な雰囲気に首を傾げた。
「なんかバクラ、この短時間でやつれた…?」
「言うな宿主…」
―結局短い話し合いの末に、ゾークはついてくることになった。
そして外出するなら服を着ろとバクラ達は言ったのだが、ゾークは「人間の決まり事など我には通用せぬわ」と断固として着ようとしなかった為、せめて空を飛んでついてくるという事を約束させた。
「ふむ…つまり貴様らが合図したら我が降りるのか?指図されるのは好かんのだが、まぁ致し方あるまい」
「また後でねー」
音もなく空へ飛んで行ったゾークを見送り、了とバクラも夜道を歩き出す。
ひんやりとした空気に自然と二人共速足になる。
「…ねぇバクラ、お前ゾークさんの事どこまで知ってるの?」
ぽつり、了が小さく呟いた。自分達の真上を飛んでいるかもしれないゾークを警戒しての事らしい。
「あー…。アイツが元大邪神だって事は知っているよな。元々は世界征服を企んでいたんだ。で、それを阻止されて闇のゲームで消えたハズだったんだが…」
「うん、そこまではなんとなく知ってる。今のゾークさんは僕らに危害を加えないかな?」
「さあなぁ。まぁ、オレの今の姿になっているのは力が無いからだろう。ざまあみろドラゴンチ…痛ェ!」
ごす、と鈍い音。
頭を押さえたバクラがぶつかってきた何かを凝視する。
「…あ?」
ぶつかってきた物―それはやや大きめの石だった。何でこんな物が、と首を捻った二人だったが、次の瞬間上を見上げた。
「ふん、我の悪口を言うからだ。これに懲りたら昔のように素直に我の言うことを聞け阿呆め」
むっすりとバクラを睨みつけるゾークの心情を表すかのようにこちらを威嚇するドラゴンを見て了が目を逸らす。
人外であるとはいえ、流石に身体の中心にあるドラゴンを見ることは生理的にまだ受け付けられないらしい。
「…ゾーク様よォ、元部下にデカイ石ぶつけんのはちょ〜〜っと酷いんじゃねぇですかぁ?」
ヒクヒクと目元を引き攣らせながら厭味を言うバクラに、ゾークも口元を引き攣らせる。
「ほう…我に盾突くか?よかろう、ならば我の力の前に平伏し――」
「やめてよゾークさん!」