CHAPT.1 ー絶望トロピカル

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『仲間を殺した生徒だけがこの島から脱出できる…』

その言葉を聞かされた私達は、誰もが無言のまま立ち尽くしていた。そのまま誰も何も言わないまま、やがてみんなは散り散りになって消えていった。

私があの公園を後にしたのは、何人目だっただろうか。よく覚えていないが、私の性格からしてきっと三人目とか四人目だったと思う。ただひたすらに、暗い道を俯き加減に歩いた。誰かと話したい、けど誰にも会いたくない。明確な目的地もなくただただ歩いている私の耳に聞こえてきたのは、あの底抜けに明るいモノクマの声だった。

「なんで、こんな事に……」

与えられたコテージのベッドの上で、仰向けに寝転んで天井を眺める。今日あった一連の出来事を思い返して、思わず左右に頭を振った。これは悪い夢に決まっている。こんな異常な事あるはずがないんだ。殺し合いだとか、おしおきだとか、そんなゲームの中のような出来事が、現実で起きるなんてそんなはずないんだ。

「いててて……」

ぎゅむっと自分の右頬をつねる。痛くない痛くないと祈りつつ思い切りつねった頬は、悲しくもじんわりとした痛みを灯した。

「あー…痛い……」

おそらく赤くなっているであろう自分の頬をさすりながら寝返りをうつ。すると、どっとした疲れが体を襲い、瞼が自然に下りてくる。そうだ、もう今日は寝てしまおう。何もかも全部放り出して、夢の世界に逃げてしまおう。

考えることを放棄して、両目をぎゅっと瞑る。すぐにやってきた眠気に身を任せて、私は完全に寝る体勢に入った。
ベッドに沈む体と同様に、だんだん薄れていく意識の中で、最後まで私の右頬の痛みは残っていた。
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