プロローグ

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空港を後にした私は、これでもかというくらいに肩を落としながら歩いていた。
それというのも、さっき初めて話した田中くんにとんだ失礼を働いてしまったのだ。確か田中くんは、最初にぶつかりそうになった時に遠まわしに自分には触るなと言っていたはずだ。それを言われた直後に手を握って、挙句の果てには上下に振り回すなんて事をしてしまった。きっとそれで田中くんは怒って私に見切りをつけてどこかに行ってしまったんだ。

「ううー…。」

思い出せば思い出す程申し訳ない。一体私はどうしてしまったというのだろうか。普段なら、そんな失態絶対にしないのだ。嫌われないように、周りから人が離れていかないように、誰も嫌な思いをしないように、一定の距離を保って人と接してきていたはずだ。それが初対面だったら尚更である。それが、なんでいきなり田中くんにあのような事をしてしまったのだろうか。

「わ、分からない……!」

頭を抱えて道を歩く。途中、スーパーやホテルのような建物や牧場の前を通り過ぎたが、ちらっと中を覗いたところ人が居るのが見えたので、逃げるように素通りしてきてしまった。今、人と話しても上手く話せる気がしない。それよりも今は先程の失態の反省会だ。

悶々と悩みながら暫く歩き、足元にさした何かの影にふと顔を上げると、そこには大きな橋がかかっていた。青い海の上を通る橋の向こう側には、ここと同じような島が見える。この島以外にも、他に島があるのだろうか。もしかしたらまだ誰も行っていないかもしれない。少し迷ったが、とりあえず橋を渡ってみる事にした。
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