プロローグ

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汗がダラダラと背中を伝う。ブレザーの上着を脱ごうと顔を上げると、日差しの強さに思わず目を細める。ほんとにここは、南の島なんだ。そう再認識したあとで、私はゆっくりと周りを見渡す。

「わー。何ていうか本当に…真夏、だよな」

キラキラと輝く青い海に、白い雲がゆったりと流れる水色の空。そこかしこに生えているヤシの木が、また南の島の雰囲気を倍増させている。

とりあえず、今までの一連の出来事を簡潔に説明しよう。
希望ヶ峰学園に入学するはずだった私は、どうやって入ったかも分からない教室でのウサミと名乗るぬいぐるみの突然の登場の後、まるで魔法でもかけられたかのようにこの南の島に立っていた。どうやって、と聞かれても答えられない。だって本当にいつの間にか、ここに立っていたのだ。周りの新入生達も、何が起きたのか分からない、と言ったように動揺していたので、私だけが夢を見ていたとかそういうのではないと思う。…自信はないけど。

その後、とりあえず落ち着いて自己紹介でもしようという十神くんの提案に乗っかって、皆が次々と自己紹介をしていった。さすが、超高校級なんて呼ばれるだけあって、個性的な人が多いみたいだ。何とか自分の短い自己紹介を終わらせると、その後たっぷりと時間をかけてようやく全員の自己紹介は終わった。そこで、とりあえずこの島の探索をしよう、となったところで今に至る。

「探索と言われても、まずどこから見て行けばいいのかな…」

砂浜から出た道の真ん中。私は一人で右と左の道を交互に見ていた。誰もいない道を見て、1つ溜め息をつく。

――本当に、私はダメだなあ

まだ砂浜に残っている狛枝くんと、もう一人の男の子以外の皆は、解散という言葉と同時に散り散りに探索に行ってしまった。普段から優柔不断で内気な私は、誰かに声をかけることも出来ず、だからと言ってさっさと探索に行くこともできずに出遅れてしまったのだ。前の学校でもそうだった。他の皆についていくのに必死で、嫌われないように気を遣うことばかり考えて……。
そこまで考えて、頭をぶんぶんと横に振る。こんなんじゃだめだ。私は変わるために希望ヶ峰学園に来たんだから!

「と、とりあえず右に行ってみよう!」

ぐっと肩に力を入れて、右方向へ足を向けた。じゃり、と砂が音をたてた。
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