SweetS×Spice!!

□第2話。
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『失礼しますよ〜。』





……やっぱりいない。
全く、留守のくせに鍵も
かけていかないなんて不用心
過ぎるっしょ…。




仕方ない、吉永さんが
帰ってくるまで昼寝でもするか。
この家のソファー、別に
新しくもないのに凄い居心地が
いいんだよな〜…。




私は一人、そんな事を考えながら
ソファーの背もたれに手を
かけた。




そこに人がいたことなんて
知らずに。





『………うわぁっ!?』


『えっ!?何、いきなり何だよ!?』


『い、居るじゃないッスか!
返事位返してくれても
いいんじゃないのか!?』


『バカヤローそんなの知るわけ
ねーだろッ!?
第一今昼寝してたの見ただろ!!』





そうは言われても居ないものだと
思っていた所にいきなり
出てきたらびっくりするだろ!
私は心の中でそう毒づいた。
吉永さんも溜め息を漏らすと
ソファーに座り直した。





『あー、マジびっくりしたわ…。
おかげで目ぇ冴えちまったし。
……で、何か用があって
俺の所に来たんじゃないの?』


『あ、そーでした。
実は吉永さんに勉強を教えて
もらえないかと思いましてね。』


『勉強?何の?
言っとくけど、俺の得意分野
現国とか保健体育くらいだから
教えられるか知らないよ。』





吉永さんが勉強出来ないのは
勿論承知の上である。
しかし大学まできちんと卒業
したということは最低でも
並みには出来るということでは
ないのだろうか。





『数学なんですけど…。
まぁ大学まで出てるんで
このくらい簡単に問いちまうのが
吉永さんでしょ。』


『数学とかねーわ。
お前アレだぞ、俺学生時代
数学だけはさっぱり理解出来た
試しがねーからな。』


『そんな苦手なんですか?』





少し調子に乗らせたらいいと
思っていたのに、吉永さんは
意外にもきっぱりと言い切った。





『俺、学生時代の数学って
言ったら悲惨でしかなかったわ。
ま、言ってもアレだから
数学だけだから。』





自分は頭良いですよ、と
言わんばかりに吉永さんは
数学だけ、と強調していた。
吉永さんの頭の良さくらい
理解している。
私と同じ文系の吉永さんは
他の教科は赤点ギリギリで
毎回逃れていたのだろう。





『赤点じゃなきゃいいんです。
お願いしますよ。』


『え〜…。』


『飯奢りますよ。』


『まぁ…。』


『昼飯、デザート付き。』


『考えねー事もないけどよ〜。』


『……じゃあ帰っちゃおうかな。
富崎さん所に。』


『よし乗った。教えてやる。』





吉永さんを陥れる時に使える
魔法の言葉。
“富崎さん”
吉永さんと付き合ってから
1週間。
私と富崎さんが長い付き合い故か
吉永さんの前で富崎さんの
話をすると変に話をそらそうと
したり、今みたいに簡単に
話に乗ったりする。




因みに富崎さんと言うのは
先程まで私に超スパルタで
勉強を教えていた男である。




本名“富崎 和成”。
私の幼馴染みにして腐れ縁。
向こうはどう思っているかは
知らないが、私はアイツの事は
あまり好きではない。





『………で、吉永さん。
この問題なんですけどね。』


『あ〜?あぁそれはアレだろ。
これをここに…』





あれ?おかしい。
思ったより普通に教えてくれる。
もしかしたら本当は頭使わない
だけで、実際は頭が良いとか?





『おーい聞いてんのか?』


『あ、はい。
これをここに入れるんですよね?』


『そーそー。で、まぁ後は
やり方前のと一緒だから。』


『なるほど…。』





吉永さんはそれだけ言うと
便所行ってくるわ〜、と
間の抜けた声で部屋から
出ていった。




何はともあれ、これで赤点は
逃れられるかもしれない。
夏休みを課題で埋め尽くすなんて
意地でも避けたいし。




私は一安心して答え合わせ用の
解答を手に取った。









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