SweetS×Spice!!

□プロローグ
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―――春はもう過ぎたけれど
まだ少しだけ肌寒い夜。




5月。
真っ暗になった空に
点々と光る星。
あの星座は何だろう?
そんな乙女チックな想像は
最初からなかった。




………そう。
ムードなんてない。
キラキラ光る綺麗な星も、
ほんのり冷たい夜の風も、
何の役にも立たない。



こんな廃虚になった建物の
中じゃ……。





『お前の事が好きだ。』





普通の人が聞いたら
何を思うだろうか。




普通の女の子なら相手が
自分のタイプなら
嬉しいだろう。
そうじゃないなら酷い話、
気持ち悪がられて話のネタに
されてしまうだろう。




女の子なんて、そんなものだ。





『あの……。吉永さん。
それはどういった面での
好きなんでしょうか?』


『これで分かるか?』





視界が真っ暗になる。
いや、元から暗かったけど
今度は何も見えない位に。




ボーッとしていた。
2,3秒程経ってから自分が
目の前の男に抱き締められて
いることに気が付いた。





『俺の“好き”はこういう事
したいっていう好き、ね。』


『……理解しました。』


『そりゃどーも。』





どうやら目の前のこの男は
恋愛という関係で自分の
事を好いているようだ。
しかし疑問である。





『アンタとは出会った当初から
何となくつるんでたんで
破天荒な所があるって言うのも
理解してました。』


『ま、そこらへんは
お互い様って感じだけどね。』


『………今回のは、ちょっと
びっくりしました。』


『だよねー。』





いつも通りの立ち振舞い。
それはお互い様で特に
これと言って変わりはない。
一つ違うのは目の前の自分を
見詰める瞳が、すっごく
真剣だって事。





『どう?答え出せそう?』


『ちょっと時間もらえるなら。』


『りょーかい。じゃあまた
ここで会おうか。

同じ時間に同じ場所で。』





目の前の男はいつもの
やる気のない顔になると、
背中を向けて歩いて行った。




呼び出したくせに先に帰るとは
全く礼儀の一つもなっちゃ
いませんね。




普段の自分ならそう背中に
毒づいていたんだろう。
でも今は普段の自分じゃない。
一人取り残されたその空間で
私は思わずしゃがみこんだ。





顔が熱い。
熱でもあるんだろうか。
声が出ない。
風邪でも引いたんだろうか。
身体中の脈という脈が
波打っているようで
心臓が外まで聞こえるんじゃ
ないのかって位にうるさい。




一体どうしたんだろうか。
あの男が自分にとって
どんな男かなんて
知っていただろう?




それに恋愛対象として
見たことなんて一度も
なかったじゃないか。
この男に限らずどの男にも。





(どうすりゃいーんだよ…ッ!!)





私は一人残された廃墟で
ただただ考え込んだ。




私に告白をした
【吉永 祥太】
と言う男の事を。








⇒あいさつ

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