SweetS×Spice!!

□第2話。
3ページ/3ページ








『これならいけるか…。』





発展問題は捨てた。
とりあえず教えてもらった
問題は大体合ってたので
(間違ってた所もあった)
その問題に賭ける事にした。





『あー、ごめん。
間違ってた所やっぱあったか。
どうしても数学は苦手
なんだよな〜…。』





吉永さんは戻ってくるなり
そう言った。
すると私の解いた問題を見て
やっぱ難しいな、と笑った。





『あの、吉永さんは何で
苦手なのに教えてくれたんです?
面倒なら放っておいても
よかったじゃないんスか。』





………しまった。
何を言っているんだ私は。
これじゃあ喧嘩うってるのと
同じじゃん…。




恐る恐る吉永さんの顔を見る。
どんな顔してるのか分からない。





『ま、面倒じゃないっつったら
嘘になるけどよ〜…。』





幻滅させたかもしれない。
元から性格はよくないと自分でも
分かってる。
でも最近は吉永さんの前で
意識すればするほど思っても
ないことを口走ってしまう。





『……吉永さん。』


『ん〜?』


『嫌になったら断ち切って
もらって構いませんからね。』





その方が楽だろ?
私はきちんと笑えてたかな。
ほんと、不器用な自分が
嫌になる。





『断ち切るも何もねーよ。
勝手にそーゆーの言うのやめて
くんない?
告白したの誰だと思ってんの。』





怒らせたかもしれない。
吉永さんはただペンを握るだけの
私の手を、上から握った。





『つーか笑うならそんな悲しい
顔しないの。
鈴村の憎まれ口の一つや二つで
俺がめげるわけないでしょ。』


『悲しい顔なんかしてねーし。』


『してます〜。現在進行形で
してますけど〜?』


『してねーし。』





大人の余裕ってヤツかコレ。
スッゲェ腹立つ。
悪いことしたのは私の方だけど
それは置いておいて。
何だか見透かされているようで
気が狂うじゃん。




私が一人俯いていると、
吉永さんは手を放して今度は
私の頭の上に手を置いた。





『……夏休みさぁ、
どっか行きてぇだろ。』





…………………。


……………。


………はい?
私は下げていた頭を上げて
吉永さんの方を見る。




思ったより近くて、
恥ずかしくなった。





『夏休みだよ、夏休み。
折角の休みだし普段は忙しい
鈴村君でも、夏休み位
時間余るでしょ?』


『君じゃねーし…。』





吉永さんはよくふざけて
私の事を君付けで呼ぶ。
男みたいな私をからかってる
風にしかとれないけれど、
不思議と嫌ではないのであまり
突っ掛かりはしない。




止めろって言っても、
どうせ止めてくれないのは
分かってるし。
言うだけ無駄だろう。





『あんまり人混みの多いとこ
行きたくないよな〜。
鈴村君はどこがいい?』


『…行きたくねー。』


『やっぱり二人っきりってのは
まだ早いか〜。
じゃあ他の暇な連中も誘って』


『そうじゃなくて外に
出たくないんです。』


『何?日焼けとか気にする
タイプだったりすんの?
まぁ確かに風呂入るとすげー
痛ぇよなー。』


『違ェよ…ッ。
そーじゃなくって、』


『単なる引きこもりですか。』


『違ェってんだろ!!
そ、外なんか出なくたって
家の中で一日中二人っきりに
なれるし…ッ。





誰も二人っきりになるのが
嫌なんて言ってねーから!!』





……あー、またやっちまった。
てかヤバい。
心臓口から出るんじゃないのか
って位、バクバクいってる。
何だよコレ。カッコ悪過ぎ。
これじゃ子供過ぎるし…。




吉永さん、申し訳ない。
冗談でもアンタが惚れた奴は
こんな野郎です。
可愛さの微塵もありません。
とっとと追い出せばいい。
そして違う女と仲良くすれば
いいさ。




私と一緒じゃ、幸せにすら
なれないっしょ…?





『………反則だわ。』





吉永さんは私の髪を
ぐしゃぐしゃにしてきた。





『そんなにぐしゃぐしゃに
しても天パもどきにゃ
なりませんよ。』


『知ってるっての。』





何か知らないけど吉永さんの
声が明るい。
私が顔を上げようとすると
押し戻された。





『テスト、赤点採んなよ。』


『とりませんよ。』


『ん、よし。』





吉永さんは軽くポンポンと
私の頭を叩くと立ち上がった。
それに釣られて私も顔を上げた。




目が合うと、吉永さんは
今までとは違う、凄く優しい
目をしていた。




……やべーよホントに。
心臓うるさすぎる。





『ほら行くぞ、昼飯奢って
くれるんだろ。』


『………仕方ねェ。』





私が立ち上がると、いつもの
間抜けな笑顔に戻った。




……反則って何ですか。
アンタの方がよっぽど反則
ですけど。




何かよく分かりませんが、
どうやら私はアンタの事が
気になりかけているようです。




………まだ完璧に好きって
わけじゃないからな!









前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ