千切ったものと契られたもの
□秘書の運命
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いつも先に気付かれるのは妹の方。
地味な私に気付く人なんて誰もいなかった。
私はそのような記憶があった。
「―!」
「………」
晴希さんは今でも私の方を見ているようだ。眼鏡がないからよく見えないが。
晴希さんの顔が残酷に微笑んでいるのは分かる。
「……可哀相だが、諦めてくださいね」
晴希さんが眼鏡を上げる音が微かにした。
「それがあなたの、運命なのだから」
「……」
「運命からは決して逃れられない。それが運命だから」
「……はる…」
「あなたが姉として生まれてきた事も、そしてあの男の一生の奴隷となる事も運命なんです」
「っ………」
私は背筋が寒くなった。今までのあの男にされてきた事を思い出すと、これは運命と言われた時は絶望を知るしかない。
逃れられないと言われれば、私は必死で泣き叫ぶしかない。
いやだいやだいやだ。
誰かっ…誰か!!
助けてよ!!!!
「絶体絶命…窮地に立たされて…」
晴希さんはクスクスとしている。
「…あの男に目をつけられて……あなたという人はなんと危ない状況にいるんでしょうね」
「あっ……あうっ…」
私は恐怖で言葉が出ない。
「まあ、せいぜい」
晴希さんの声が低い。
「修斗を怒らせて……あなた自身壊れないようにしてくださいね」