千切ったものと契られたもの

□社長の目的
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長年帰省していなかった私にとって、実家は少し懐かしく感じた。

高速に仕事を片付けたとはいえ、既に母の葬式は終わっていた。


母が死んだ。

実感が湧き上がる。

―…。

ふと気付いた。

沙織がいないことに。





私は母の妹である叔母に電話をした。

「…まあ、柚香子ちゃん?…久しぶりねえ…」

名乗ると、叔母はすぐに分かってくれた。

「富美さん…沙織がどこに行ったのかご存知ありませんか?いないんです」

用件を述べると叔母はあっ…と一瞬黙ってそして語り始めた。

「…柚香子ちゃんのところには…借金があったわよね…?」

「あ…はい」

私たちには出て行った父が残した多額の借金があった。

「その借金を肩代わりする人が現れてね…その代わり沙織ちゃんがお手伝いさんとして、その人の屋敷に雇われちゃって…」

「…え?…」

どういうこと?

私はあり得ない展開が、理解できなかった。

「借金をなくす代わりに、妹を連れて行ったということですか?どうして?!」

私は分かりやすく、整理すると、ハッとなる。

「その人はどなたですか?」
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